前川健一の象がバンコクを歩いていたころ

バンコクにも空があった vol.004

写真左端、ぎりぎりに見える小さな白い階段が、サイアムスクエア。

バンコクから空が消えたのは、高架鉄道BTSのせいだ。高架の高速道路のせいでもある。

BTSの工事が始まると、「全都駐車場」と呼んでいたバンコクの渋滞がさらにひどくなり、1日1カ所の移動で終わるというありさまだった。大量の本を買い、きょうはタクシーで帰ろうと思ったが、あまりの渋滞ぶりにタクシーをあきらめて、8キロの本を手に3キロの道を歩いたこともある。もちろん、歩いた方が早く着いた。

だからBTS完成はうれしいのだが、空が狭くなった。バスの窓から見えるバンコクは、道路上のBTSのせいで、うす暗く、視界が狭くなった。「あれ、ここはどこかな?」とバスの窓からあたりを見回すことが多くなった。逆に言えば、BTSの高い視点からバンコクを眺められるという利点もあるのだが、昔を知る私は、あっけらかんで、いつも太陽に射られ、雨に打たれていたバンコクが、ちょっと懐かしくなる。


前川健一の1枚の写真で振り返る ー 象がバンコクを歩いていたころ
古いポジフィルムから蘇る記憶。今はああだけど、昔はこうだった。タイの新旧を写真とともに振り返るコラム。
まえかわ・けんいち 2003年から2018年までダコ本誌にて『前川通信』を連載。特集からコラム、広告までをも辛口の批評をくれているダコ名誉顧問ライター。『タイ様式(スタイル)』(講談社文庫)など著書多数。また、旅行人HP(www.ryokojin.co.jp)にエッセイ「アジア雑語林」を連載中。

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