前川健一の象がバンコクを歩いていたころ

序章 街の象 vol.001

ナナ周辺で象に遭遇し、歩道橋に登って撮影した。こういう時代だった。1989年

 

1990年前後に撮影したバンコクの写真がけっこうある。街が大きく変わっていくので、食文化以外にも注目したのだ。

1970年代からタイに通っているから、「1990年はちょっと前」という気がするのだが、よく考えれば30年くらい前のことだから、「昔」と言えるかもしれない。

70年代と80年代のバンコクはそれほど大きな変化はないが、90年代のバンコクは大きく変わる。超高層ビルが姿を見せ、高架鉄道BTSの運行が始まった時代だ。

1990年代に入っても、バンコクは象が歩いている街だった。スクムビットの路地を曲がったら、目の前に象の鼻が見えたときは本当にびっくりした。

象使いはお守りを売ったり、象の腹の下をくぐらせて幸運を祈願するという信仰の手数料を稼ぎ、餌代にする。

バンコクでの象の歩行禁止令がたびたび出ていたが、ラマ9世通り周辺に象使いのキャンプ地もあった。その後、動物愛護などを理由に、バンコクの象はついに姿を消した。


前川健一の1枚の写真で振り返る ー 象がバンコクを歩いていたころ
古いポジフィルムから蘇る記憶。今はああだけど、昔はこうだった。タイの新旧を写真とともに振り返るコラム。
まえかわ・けんいち 2003年から2018年までダコ本誌にて『前川通信』を連載。特集からコラム、広告までをも辛口の批評をくれているダコ名誉顧問ライター。『タイ様式(スタイル)』(講談社文庫)など著書多数。また、旅行人HP(www.ryokojin.co.jp)にエッセイ「アジア雑語林」を連載中。

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