
中華街に残っていた線路。1989年。探せば、今でもどこかで見つかるかもしれない
19世紀末でも、バンコクの主要交通機関は舟だった。運河が張り巡らされているから、小舟でどこにでも行けた。中華街では、日本から輸入した人力車が走っていた。そのバンコクに路面電車が登場したのは、1894年である。ちなみに、日本初の路面電車は1895年の京都。東京では、1903年だから、バンコクの方が早い。
かつては、タイ以外でも、ベトナム、ミャンマー、インドネシアにも路面電車が走っていたが、自動車時代を迎えて、しだいに廃止されていった。バンコクの路面電車が廃止されたのは1968年である。私が初めてタイに来たのは1973年だから、路面電車が走るバンコクは知らない。ただ、線路は撤去されずに、1990年代に入ってもまだ残っていた。
世の中便利になったもので、インターネットで検索すれば、路面電車が走っていた時代の動画を見ることができる。
前川健一の1枚の写真で振り返る ー 象がバンコクを歩いていたころ
古いポジフィルムから蘇る記憶。今はああだけど、昔はこうだった。タイの新旧を写真とともに振り返るコラム。
まえかわ・けんいち 2003年から2018年までダコ本誌にて『前川通信』を連載。特集からコラム、広告までをも辛口の批評をくれているダコ名誉顧問ライター。『タイ様式(スタイル)』(講談社文庫)など著書多数。また、旅行人HP(www.ryokojin.co.jp)にエッセイ「アジア雑語林」を連載中。