草木の薫りに鳥のさえずり。家族で歩いた田舎道。今回は、過去の記憶へタイムスリップ。そして未来へ導くワンディトリップでもあります。次はあなたが今よりもっと自然を愛せますように。
【旅して書く係】 ペロンヤス 新築、おひとついかがですか!
せっかく天気のいい日曜日やのに、強烈な二日酔いで始まった朝。そんなグダグダなおっさんの俺を、新鮮な空気で気分転換にとタイの友人が連れて行ってくれたのは、バンコク都内から車で約1時間、ナコンナーヨック県の植木村。
パホンヨーティン通りから東へ伸びるナコンナーヨック通りを走ると、古木材屋や小さな植木屋が所々に立ち並ぶ。さらに東へどんどん突き進むと、川も道も三差路と北に伸びる何の変哲もない通りに。入り口の門には、プラシットティウェート寺と書いてあるが、植木村はいったいどこに?
門をくぐっても、草花や木が並んでいるだけ。いやいや、どこまで続くのかと思うぐらい植木屋が並んでるやん! 聞くと、チャトゥチャックで売られている植木や花のほとんどが、ここからやってくるらしい。道の両端には、小さな苗木から5mを越す大きな木まで数え切れない種類の苗木が約10kmに渡り並んでいる。酒の胸焼けが一気に吹っ飛んだ。
緑につれられ、香りにつられ
車でのんびり走りながら所々で停まり、緑のアーケードを散歩する。
奥まで入っては、放し飼いの鶏と意味不明な会話をし、大きく深呼吸してさまよい歩く。徐々に気分は上々。通りの花の誘惑を受けながら、虚ろに色鮮やかな苗木の香りを楽しんでいると、隣で友達もぼんやり。ははぁ、おぬしもつられてやってきたかと顔を見上げると、いきなり20株の大人買い。値段を聞けば、一株あたり16B。や、安い。というか、おっさんは花や木の値段をあまり知らないのだが、かなり安いのではないかと。でもあんた、ちょっといきなり買いすぎやろ。……まあ、ええか。
それなら、おっさんも森の中でいっぱい深呼吸を楽しむ役を買ってでよう(笑)。あ、でもその前に軽く腹ごしらえを。
腹の虫もグッと納得
植木村の入り口から500mほど入った右手に、「クイティアオ・スコータイ」の看板が登場。クイティアオ専門店かと思いきや、カニチャーハン、トムヤム、スズキのライム蒸しなど浮気メニューも豊富。一途なおっさんは、断固として麺を頼むぞ。そしてやってきたのは、二日酔いに最高なあっさりめバミー麺入りスープ。無言で2杯目を食す。うむ、余は満足じゃ。
世間話でタイムスリップ
大木、蘇鉄や椰子の木が並ぶ隙間では、子ども達がかくれんぼしたり、大人達が椅子を並べて井戸端会議していたりと明らかにゆるい空間が辺りを包む。
食後の運動にと歳がふた周りほど違うおっさんも仲間に入れてと勝手に時間を共有し渡り歩く。すると、川沿いに大きな木製の門や扉が飾られたアンティーク家具屋を発見。吸い込まれるように中へ入ると、木製のカウンターバーや小さな桟橋が売っていた。軒先で渋い椅子に座っているのは、マネキンかと思いきや、おばあちゃんがのどかにぼおうっと日向ぼっこ。子どもが玩具の鉄砲を持って、一緒に遊んでとばかりにバンバンバンと飛び出してくる。疲れたら、川べりで2人座って日向ぼっこ。
ああ、何でこんなに安らぐんやろ。商売っ気のないこのゆるさ。いやいや、遊んでばかりでは申し訳ない。庭園のような店内を物色し、気に入った椅子と机のセット、試しに値段を聞いてみる。セットで1400B。かなり安い。気に入ったが、車に積めそうもない。
おばちゃん、「マイペンライ、次回ね」と世間話で庭に華が咲く。
木洩れ日のカフェで
お天道さんが西の空へ頭を垂れ始めた頃、おっさん達がやってきたのは木洩れ日が差し込む最後の楽園。川沿いのテラスに並んだ木製の椅子に腰を落とし、大人の珈琲を渇いたのどに流し込む。その瞬間、そよ風が木々の間を通り抜け、土色の川で漁をしていた木製のボートが微かに揺れる。隣でおしゃべりしていた家族の温かい笑い声も風に乗っては消えてゆく。
そして幼少時代の忘れかけていた記憶が、目の前に広がる景色とシンクロし、鮮明に甦った。またいつの日か、家族と来れたらええなと、沈む夕日に向かって車を走らせた。
ナコンナーヨック植木村
住所 Wat Prasitthivet, Nakhon nayok Rd., Nakhon nayok 26120
営業 7時頃~17時頃(営業時間、店休日は店ごとに違う)
行き方
ナコンナーヨック植木村
Wat Prasitthivet, Nakhon nayok Rd., Nakhon nayok 26120
7時頃~17時頃(営業時間、店休日は店ごとに違う)