“タイ”という言葉には「自由」という意味がある。第二次世界大戦前、欧米の植民地支配がはびこる時代においてタイは、巧みな外交手管によって列強をかわし、独立国の立場を貫いた国。国民のプライドを背に受け、タイの自由を守った翼たちが集う場所、タイ国空軍博物館へ。
旅して書く係 在タイ4年、元バックパッカー・S子
おすすめ係 ダコのWEBディレクター、ポック
マニアじゃない人も
その名前には聞き覚えがあった。タイの「凄いのに知名度が低い」場所のひとつとして。タイにいるなら未訪はもったいないとの評判を、軍用機ファンの仲間内でだけ熱く響く声として聞き捨てておいたのを、ダコのタイ人スタッフ・ポックくんの誘いに乗って訪ねることとなった。場所はかつての空の玄関口(今はお勝手口)ドンムアン空港に隣接するタイ空軍司令部の敷地内。屋外展示もあるそうなので涼しい午前中がいいねと、ポックくんとBTSモーチット駅で落ち合ったのは朝の9時。
ウィークエンドマーケット側から39番のバス(運賃18B)でパホンヨーティン通りを約40分、「空」や「軍」のロマンとは縁なく生きてきた私でも、果たして楽しめるのか否かと思案しつつの車中でした。
聞けばポックくんも初訪と、タイ人の間ですらあまりポピュラーでない場所のようですが、この路線を走るバスの車掌には博物館の名を告げればまず間違いなく通じます。
5棟+屋外の広い展示スペース
車掌の目配せでバスを降りると、博物館は目の前。タイ空軍が重ねてきた歴史の証である軍用機を保管する施設として1952年に建てられ、設備を整え博物館として一般公開されたのは40年前のこと。ここ100年に活躍した軍用機が約60機収められています。
館内は5つの棟に分かれた構成になっていて、入館してすぐの1棟と隣の2棟がメインの展示場。大型倉庫のような無機質でだだっ広いスペースに軍用機が何機も首をそろえて並んでいるのは、マニアならずとも心に迫る光景。
施設内で唯一エアコンが効いている4棟では、訓練のための機械や空軍の制服など、空軍機に関する小物が展示されています。押さえるべきは「初」と「唯一」素人にもその凄さがわかりやすい、ハイライト3機をご紹介。まずは、ノースロップ社製のタイガーF-5戦闘機シリーズのひとつであるF-5Bのなかで、世界で一番初めに製造されたものの現物。ボリパトラというタイ名が付けられたこれは、タイが初めて自ら設計・生産した爆撃機のレプリカ。木製のプロペラに時代を感じます。
1929年のインド・ニューデリーまでの親善飛行は、タイ国産の飛行機で行った初の外国飛行。カーチス製複葉戦闘機のうち、輸出用に開発されたHawk III。世界中で現存するHawk IIIはこの1機のみだとか。
ひとり1機のおみやげ
ぜひ体験して欲しいのが、無料で体験できる組み立て式紙飛行機作り。職員の指導のもと、1枚の紙から切り抜いた各部品に立体的なクセをつけてボンドで固定して紙の模型飛行機を作っていきます。挑戦したのはビギナー向けのF‐86Fセイバー戦闘機。隣で黙々と手を動かすポックくんと、本気で完成度の高さを競ってしまいました。完成後は屋外にある実物と見比べてご満悦。1棟のスーベニアショップには値段も質もピンキリのプラモデルが並んでいますが(70~3万B)、飛行機素人にはむしろ自分の手で作った紙飛行機の方がいいお土産になるかも知れません。
食事スポット
昼食は、BTSモーチット駅に戻る道上にあるインチャロンマーケット(タラート・サパーンマイ)へ。タイ食のブースが並ぶ一角の「スパンポーチャナー」というお店で、「シャンハイ」と呼ばれる、緑豆から作った緑色のツルツル麺入りのクワイチャップ(25B)を頼みました。マーケットは生鮮食料品が充実していて、それ以外はアヌサワリーロータリー周辺のようなローカルな品揃え。
見学後博物館内でサッと食事を済ませたければ、正面向かって左に併設の食堂があります(6時~15時)。マーケットを出てパホンヨーティン通りを渡り、行きと同じ39番のバスに乗ってモーチットへ。混みはじめた車内で、中に入った紙飛行機がつぶれぬようカバンをそっと持ち変える。少し飛行機とお近づきになった半日コースの遠出でした。
Royal Thai Air Force Museum
電話 0-2534-1764
営業 8時~16時 無休
入場料 無料
HP www.rtafmuseum.com (タイ語)
行き方 アヌサワリーから34, 39, 503番のバス。
モーチットから34, 39, 188, 503番のバスへ。
※どの路線もインチャロンマーケットを経由します。