シェラトン・グランデ・スクムビットの「Basil」は、タイ料理のファインダイニンクがまだ珍しかった十数年前から、おしゃれな雰囲気の中、洗練されたタイ料理を提供しているお店だ。
その「Basil」にこの4月より料理長として、クリット・プラトゥアンスック氏が就任。彼の料理は食材やフレーバーはタイ料理そのものながら、フレンチなど新しい調理法を駆使し、新しい驚きを与えてくれる。
ル・コルドン・ブルー・フランス料理コース卒のクリット・シェフ
クリット氏は、バンコク出身。米国のル・コルドン・ブルーでフランス料理を学んだ後、ビバリーヒルズやロングビーチの名店で働き、日本のホテルやレストランでも経験を積んだ。
またタイに帰国では同ホテルのイタリア料理レストラン「Rossini」でスーシェフを務めるなど、各国料理に精通した彼がそのバックグラウンドを最大限に活かしタイ料理を手がける。
「私はタイ料理を食べて育ち、フレンチやイタリアンのキッチンで働いていた時も、休みの日などはタイ料理を作って食べていました。タイ料理は常に私の根幹にあるものなのです」と語るシェフ。
夏のディナーコースは、畑や港から個人宅の庭まで、料理長自らがタイ全国をまわって選んだ食材を使った料理を楽しめる。
それではさっそく9品コースの中身に!
アミューズブーシュは炭火で焼いた餅米に、イサーン名物の発酵した魚・プラーラのディップ「ボン」をのせたもの。ボンは味噌に似た風味で日本人には、どこか懐かしい味。
プーケット産の海ぶどうの上には、牡蠣のフォーム。泡なのに、いや泡だからなのか、潮の香りが鼻を抜け、豊かな風味が口に広がる。
北部の地方のソーセージ「サイウア」は、アスピックゼリー状で登場。外見はどう見てもフレンチながら、口に入れると確かにサイウア。苦味や辛味のあるハーブを齧りながら食べると、確かにタイ料理。
ビリンビは酸味の強いフルーツで、あまり市場で流通していない。そのビリンビとサバをコンソメの手法でトムヤムスープにした一皿。見た目も味もクリアなスープはサバ本来の旨味も活している。
タコを低温調理器で2時間火を通し、高温の油で焼いたものに、塩たまごのエスプーマを添えたもの。タコは外側はクリスピーだが、内側は驚くほど柔らかい。イカの塩たまご炒めをアレンジしたそうで、言われてみればなるほどの一皿。
低温調理した豚肉はジューシーで柔らかい。ケールはムースにし、黒にんにくのソース、そしてシェフのもうひとつのルーツである広東料理でおなじみのホイシン(海鮮)ソースのフォームで一気にチャイナタウンの味に。
牛肉をナムプラーでマリネをし、熟成肉(ドライエイジ)の風味に。肉の表面には煎り米(カオクア)をまぶし、ソースはナムチムジェウ(東北タイのタレ)。ライムのゼリーで酸味を、足して食べると……これはまさにスア・ローン・ハイ!
仕上げにブレンダーで攪拌し、滑らかなポタージュ状にしたカレーは、シェフ自ら探してきた貝のコリコリの食感と、口に入れた瞬間は対照的だが、噛むうちに混ざり合いお互いの風味を引き立てる。
タイでは酸味のあるフルーツにチリ、塩、砂糖を混ぜたものをつけて食べるが、それをトリュフのようにグアバソルベにかけるという演出が楽しいシャーベット。
ココナッツミルクに色とりどりのお団子を入れたデザート「ブアローイ」。ここではココナッツに炭で風味付け。日本人にはお汁粉のような味に錯覚するが、香港人は芝麻糊(ごま汁粉)のように感じるそうだ。
創造性とおいしさを両立 正真正銘、タイ料理
「Basil」の料理は様々な調理法を使い、盛り付けもいわゆる伝統的なタイ料理には見えない。しかしタイ全土からの食材と調味料を使った風味は正真正銘のタイ料理だ。そしてちゃんとおいしい。
「おいしい」という言葉はフードライターのNGワードだが、あえてここで使わせてもらいたい。
創造性を優先して、肝心の味は置き去り気味の昨今のバンコクのレストラン業界。クリット・シェフが作り出す料理には、創造性とおいしさを両立させた次世代のタイ料理を感じさせられる。
A Taste of Summer in Thailand
期間:8月15日まで
料金:9品コース1850B、7品コース1650B(低温調理豚肉とグアバソルベを除く)
※ホテルHPからの予約で約20%オフ! 9品コース 7品コース
時間:18時~22時半 無休
電話:0-2649-8366
HP:www.basilbangkok.com
場所:Basil シェラトン・グランデ・スクムビット1階 BTSアソーク駅
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