下川裕治のタイ発日本行き 機上にて

東京ばな奈とタイ人の知人と 第4回


東京とバンコク間には、タイ・エアアジアXとスクートというLCCが就航している。2社とも預ける荷物が有料である。少しでも航空運賃を節約しようとLCCを選ぶわけだから、預ける荷物をなくし、機内持ち込みに……と考えるのは当然のことだ。それに対してLCCも、機内持ち込み荷物の重さチェックを厳しくしようとする。そのイタチごっこが、空港のチェックインカウンターで繰り広げられる。

空港によって、このチェックに温度差がある。東京の空港は、特に厳しいといわれている。担当者によって違うというが。成田空港でタイ・エアアジアXのチェックインカウンターの前に立った。僕の機内持ち込み荷物を秤に載せると、計測の針は10㎏を示した。エアアジアの機内持ち込み荷物の上限は7㎏である。僕は、大目に見てくれるだろうと思っていたのだが、甘かった。いや、大目に見てくれたのか。スタッフからこういわれた。

「3㎏オーバーです。免税品は絶対に買わないでください」

目が嘘をついていないか心配だった。持ち込む荷物は7㎏だが、そこにはチェックインをした後に買う免税品は含まれない。

「でも、それはあんまりじゃない」

一緒に飛行機に乗るタイ人の持ち込み荷物を目に、つい呟いてしまった。彼は持ち込み荷物はクリアしたのだが、免税店で『東京ばな奈カステラ』8個入りを20箱も買ったのだ。

「2箱買ったら、お土産を渡す相手を次々に思い出しちゃって……」

しかし甘くはなかった。待合室で大きな袋を持った人をチェックしていたのだ。当然、知人のタイ人の荷物も目に止まった。3袋に入った『東京ばな奈カステラ』をひと袋にまとめるようにいわれた。こういう指示にタイ人は素直に従う。汗をかきながら、ひとつの紙袋に詰め込もうとしているが、無理に決まっている。知人が僕を見た。

「わかった。紙袋、ひとつ持つよ。僕は免税品を買うなっていわれたんだけどな」
「マイペンライ。マイペンライ」
「でも、日本人なら事前にかさばらない土産を買っておくと思うけどな」
「そんなことをしたら、チェックインカウンターで重量オーバーになるでしょ」

結局、タイ・エアアジアXはタイの航空会社ということか。


旅行作家・下川裕治の往復便 ー タイ発日本行き 機上にて
しもかわ・ゆうじ 1954年(昭和29年)、長野県松本市生まれ。タイ、アジア、沖縄と旅を続ける旅行作家。ダコはじめ各国都市で制作するガイドブック『歩くシリーズ』の監修を務める。

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