
男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:文化人類学 片山 隆裕
セックスツーリズムがベトナム戦争後は観光の柱に
国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光ランキング(2013年)によると、タイは観光客到着数で世界10位、観光収入で世界7位の観光立国です。2014年の観光客到着数は2480万人余りで、観光産業はGDPの約10%を占めています。
タイ政府は、ベトナム戦争終結後の外貨獲得策として観光庁(TAT)を設立し観光産業を推進してきましたが、ベトナム戦争時の1967年に駐留アメリカ軍との間で交わした「Rest & Recreation条約」に基づいて娯楽産業に従事していたタイ人女性たちを活用するために、「Exotic and Erotic」を観光政策の柱にしてきた時期がありました。
こうした政策に応じて外国の旅行会社も「わが社は、エロチックなお楽しみが含まれた画期的な(タイへの)ご旅行を準備させていただきます」(西ドイツ「R社」)、「スリムで小麦色をしたタイの女性たちは……あなたたちを優しく愛してくれます」(スイス「L社」)など、「特別サービスガール」を売りものにした商品を次々に発売することになります。
日本の旅行会社がこうしたキャッチコピーを表立って使用することはありませんでしたが、タイ人女性を同伴した日本人男性観光客は以前から多く見られました。
日本人男性は8割弱にまで増加
1970年代後半以降現在に至るまで、タイへの男性観光客比率は60~70%で推移してきました。1997年から約20年間の日本人観光客に占める男性比率も60~65%で推移してきましたが、2007年以降は概ね70~75%で推移し、2014年には77・4%と過去最高比率を記録しました(『タイ国政府観光庁』統計)。
近年、タニヤ通りに活気が戻り、ソイ・カウボーイでも日本人男性を数多く見かけるようになりました。某ホテル地下にあるバーも、タイ人女性との出会いを求める日本人男性であふれています。日本人男性観光客比率の増加は、日本男とタイ女との関係の一端を物語っているのかもしれません。
【参考文献】タン・ダム・トゥルン『売春―性労働の社会構造と国際経済』明石書店1993年








