
男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
経営学 林 拓也
日本へ来たタイ女の不思議
日本男がタイ女と無事に結婚し日本へ連れて来た時、数々の不思議な現象が起こります。もし読者の皆さんの中にタイ女の奥様を持った方がいらっしゃれば、何か一つくらい思い浮かぶことがあるでしょう。
例えば私の友人の話ですが、彼のタイ女の奥様は食卓をきれいにする時に必ずトイレ紙を使って拭くそうです。「え!トイレの紙で!?布巾じゃないの!」と、日本男の頭には「?」が駆け巡ります。タイに詳しい読者の皆さんならその理由はわかりますよね。
し かし次は難しいですよ。別の友人の奥様は、旦那さんの実家へ挨拶するため真冬の時期に初めて日本へ行きました。挨拶は無事に終わりましたが、不思議なこと は夜に起こりました。なんと寝室の窓を開けて寝たのです。日本の真冬の寒さは厳しいですから、外からは身が凍えるほどの冷気が入ってきます。「え!寒い じゃん!なんで開けるの!?」と、またまた日本男の中で「?」が駆け巡ります。
タイは常夏なので、部屋の中ではほぼ常時エアコンがつけられています。あるいは扇風機が空気をかき混ぜています。そうなんです、奥様にとって部屋の中で空気の対流の無いことは耐えられず、彼女は窒息しないように無意識に窓を開けて寝たのです。
夫婦の絆は暗黙知の理解から
この様な経験や勘に基づいて言葉に表せない知識のことを暗黙知と呼びます。企業の中で時間をかけて醸成された暗黙知は他社にとって極めて模倣が難しいため差別化の手段となり、時にその企業の競争優位の源泉となります。
タイ女は赤土の灼熱の大地で育ち、暑ければ機械を使って空気をかき混ぜ涼を得て、入った食堂にはトイレ紙が置かれてあり、汚いものはそれでサッと拭いてポイっと捨てる。
そこで培われた彼女の暗黙知は、なかなか日本男には伝わらないものなのです。
しかし積極的に考えれば、その様な彼女の暗黙知を日本男が理解することができれば、その二人の夫婦の絆は他のどの家族よりも強くなるはずなのです。互いの暗黙知の理解に努める。それが国際結婚のあるべき姿では無いでしょうか。
【参考文献】野中郁次郎、竹内弘高(1996)『知識創造企業』東洋経済新報社
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はやし・たくや 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。シーナカリンウィロート大学社会科学部客員研究員、桜美林大学准教授を経て、現在は青山学院大学教授。博士(経済学)。専門は現代日本経済・経営史、アジア経済・経営史。 |








