男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:政策科学 竹本 拓治
第25回のコラムで、タイ女は日本男の「礼儀正しさや規律文化に代表される日本人の精神の描かれ方」に惹かれるのではないかと述べました。一方で台湾からの留学生によると、台湾でも日本男が人気なものの、「几帳面で真面目な文化」ではなく、単純に「日本」という名前に惹かれるそうです。
程度の差はあれ、このような違いからも、タイ独自の「タイ女による日本『男』文化論」なるものが影響していると思われます。
かつての「日本男=金持ち」の印象が薄らいだ
青木は著書「『日本文化論』の変容」の中で、否定論に始まった戦後から1990年代までの外国人から見た日本文化のとらえ方の変化を述べています。そして今後の日本文化に独自性の必要を認めつつ、普遍性へ向かう時がきたとしました。
同書が出てからおよそ20年、日本経済はゼロ成長となり、タイ経済のキャッチアップから、確かに経済面では日本の特殊性が徐々に失われました。つまりタイ女からみた日本男観も「金持ち」という印象が薄らいでいったのでしょう。
加えて、時代の流れの中で日本男がもっていた独自の精神も普遍化したのかもしれません。しかし幸いというべきか、精神の普遍化は経済面ほど目に見えやすいものではなく、タイ女の中の日本男のイメージとして残りつづけたのではないでしょうか。
現代日本人の「良き独自性」にモテのヒントが?
現在はどうでしょうか? 本学学生の意見に興味深いものがありました。
「真面目で几帳面な人がモテるかというと、日本ではそれだけだとつまらないと言われそう」
「自分の国にない価値観を持つ異性を求めるのは全然悪いことだと思いません」
「異国の文化特有の性格を魅力に感じているのでは?」
「人はみんなないものねだりをするので、自分にない容姿、文化、考えを持つ人に惹かれるのはごくごく自然なことだと思います」
これらの若い世代の意見は、戦後間もない日本には、おそらく存在しなかったものでしょう。青木が考察した「時代別の日本文化論」では様々なとらえ方がされました。では、現代の日本人の「異質さ」は何を出していくべきなのでしょうか?
「草食系男子」が増えている現代日本ですが、これからタイで活躍する日本男には、日本の精神を普遍化させることなく、再び日本の良き独自性を持って行動してほしいものです。そのためにも、タイ女が惹かれた「几帳面で真面目な文化」を、私たち日本人のアイデンティティの一つとして改めて認識しましょう。