男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:心理学 平松隆円
タイ料理に必要な日本のアレ
スクムビット通りソイ38の屋台街が撤去されるということが、大きな話題になりました。しかしバンコクには、本当にたくさんの屋台がありますよね。そのほとんどが、観光客向けではなく、現地のタイ人に利用されています。
理由は、キッチンの設備が一般的な住居には備わっていないから。そのため、家で料理をすることは難しく、必然的に外食になるんです。
な ので、タイ人の女の子と知り合って、家でタイ料理を作ってもらおうとおもっても無理かも。だって、彼女たちは料理をしたことがあまりないから。それでも、 イサーンをはじめとする地方出身の女の子なら、バンコクほど屋台がないところで育っているので、料理をしてくれるかもしれません。
そんな、料理をする女の子と付き合った方ならご存じでしょう。彼女たちが作る料理には、ある日本の調味料が必要なことを。
それは味の素。タイ料理の定番ソムタムにだって、味の素を入れます。
しかも、大量に。隠し味どころじゃありません。だから普通のスーパーでも、500gや1kgの袋で売られたりしています。
食文化へのマーケティング
でも、どうしてタイ料理に、日本の味の素とおもうでしょう。
タイには、日系企業が多く、日本食の店も多い。日本食に慣れ親しんで、味の素を利用しているんじゃないかと。ちがうんです。
味の素がタイに進出した歴史は古く、50年を超えています。このあいだ、味の素社はあるマーケティングをおこないました。バンコクのような大都会ではなく、地方都市や農村で、無料の料理教室をひらき、味の素の利用をすすめたんです。
これが母から娘へ、地方から全国へ。タイ料理に欠かせない調味料として、味の素が伝わりました。
日本の味の素は、すでにタイの味の素になっているんです。だからこそ、日本人の口に合うのかも知れませんね。
ひらまつ・りゅうえん
心理学者・日本研究者。国際日本文化研究センター講師、京都大学研究員、チュラロンコーン大学講師などを歴任。博士(教育学)。専門は化粧理学や化粧文化論。男女の恋ゴコロに関する心理や文化にも詳しい。 |