前々から妻が熱望していたイベントに、初めて一緒に行ってきた。タイの有名メラミン食器メーカー「シータイ・スーパーウエア」の年に一度のセールだ。日本人には周知のイベントだから紹介不要と妻に止められたが、タイ人の僕は知らなかった。

子供用にディズニーやドラえもん、ミッフィーなどキャラクター柄も豊富だ
たとえ知っていても興味の範囲外であり、開催地も遠いので好んでは行きたくない。食器に興味を持つのはどちらかというと女性だから、日本人男性もおおむね僕同様ではないか。
会場で見かけた旦那様方は付き添いだろう。淡々と奥様の後をついて歩く様子は、カラフルな食器の海ではしゃぐ奥様と対照的だ。
ふと気付いたのは、彼女たちがセールに夢中の姿は、美しい花畑を楽しむ様にも似ていて素敵だってこと。彼女たちは器を見ながら盛り付ける料理を想像し、食器同士の組み合わせを吟味し、子供の使い勝手を考える。
家には十分に食器が揃っていても、誘惑には逆らえない。デザインがいいだけでなく、信頼できる有名メーカーのセールだからこそ、購買意欲が刺激される。普段はデパートで、その売り場にふさわしい芳しいお値段で売られている。
大放出されているのは、在庫品や販売店から戻された型落ち品、B級品など。B級といってもわずかな傷や色ムラだから、使用には問題ない。種類は食器だけでなく、カゴやカトラリー、弁当箱、調理道具など様々で、3割から8割も値引きされている。
このイベントはスクサワット通りにある工場で毎年12月頃に、約2週間かけて行われる。バンコク以外でも、サムットプラカーン県など他県にある工場で同様に年に一度、年の瀬ころから順次開催される。バンコクが最後だ。
今回、僕は敢えて旦那様方に紹介したい。興味はなくとも、もし奥様に誘われたら、一度一緒に行ってみてほしい。きっと、見たことのないかわいらしいものに出会えるから。カラフルなメラミン食器ではなく、奥様のことだ。
それは、家族全員に心を配り、上質なものをセールで厳選する、慎ましいかわいらしさだ。
もしどれほどかわいいのか興味が沸いたなら、来年をお楽しみに!
ぺー=シリパン・ジェンタラクールラート
旅人、37歳。ダコタイ語版4代目編集長(~2015年)。現在はタイの大手出版社にて編集スタッフを務める。ダコ本誌で2009年から2018年2月まで「屋台の細道」(全108回)を連載。