男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
5人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
経営学 林 拓也
「タイ人の精神年齢は、実年齢マイナス10歳と考えるといい」
これは第7回で平松が論じたことがらです。平松はタイ人が幼いことの理由として「叱られずに育つ」「親離れ、子離れできていない」、そして「自立的思考ができない」ことを仮説として提示しました。
これは確かに経験則として当てはまる部分があると思います。この3つの仮説はすべて、「幼いこと」について消極的な価値観をもとに作られています。しかし今回私は、平松とはまったく異なる方向からタイ女の幼さについて考えたいと思います。
心の中の広大な宇宙が魅力に
日本の著名な臨床心理学者であった河合隼雄は、『子どもの宇宙』(1987)の中で、児童文学などを参考にしながら子供の内面にある広大な宇宙について論じています。
子供はだれしもある意味ファンタジーで豊かな心の世界を持っている一方、私たちは成長とともに忙しさの中でそれを失っていきますが、大人の「日常の世界」は、実は子供が持つドキドキハラハラな「あちらの世界」に裏打ちされているのだと河合は述べています。つまり、子供のちょっとした仕草などから大人は自分自身の真実の姿や価値を発見できるのです。
子供は大人が忘れていった多くのことがらを思い出させ、私たち大人が自分の姿をあらためて見つめ直すきっかけになるのです。しかし大人の方に心の余裕がないと、両者の間の通路は絶たれてしまいます。
タイ女は精神年齢が低いと嘆いている日本男の多くは、タイ女と自分とを繋ぐ、この通路が見つかっていない、あるいは見つける努力を怠っているのではないでしょうか。
タイ女の精神年齢が低いことは、心の中に持つファンタジー的な世界の割合が日本女よりも高いことを意味するでしょう。タイ女の心には、いまだに広大な子供の宇宙が存在しているのです。だから弱い人を助ける気持ちも、自然に表れるのでしょう。日本男は、そんなタイ女のファンタジー的な世界に惹かれてしまうのです。
さあ、そろそろ時間です。あなたのシンデレラはもうお待ちかねですよ。
参考文献:河合隼雄(1987)『子どもの宇宙』岩波新書