ローカルな通り沿いにある路面店マッサージは、値段も質もそんなに変わらない気がし
ますが、たまに驚く技術に出くわすことがあるんです。たとえばここみたいに……。
モンゴル (ライブ会場で四十肩に苦しむ)
ずばり実感報告: はしゃぎ過ぎた体が根こそぎ再生!
ロックの後はローカルに揉まれる
その日私は全身ボロボロだった。
前夜、日本のロックバンドONE OK ROCKの初来タイライブに行き、自分の歳も忘れステージ下で暴れていた。
そして翌日、肩より上に上がらない腕と疲れた足を引きずりながらプラトゥーナムの喧騒を歩いていた。
通りに軒を連ねるマッサージ店はどこもローカルでお世辞にも綺麗でも新しくもない。
内装は古い香港映画の世界
取材の一行は、その中でもひと際どうってことない感を醸し出す一軒に入っていく。
店の名前はヤー・ルーム・チャン。
「私を忘れないで」という思わせぶりな店名は「何度もここに戻って来てね」というお客さんへの願いだそうだ。
6年前にチェンマイで開業し、5年前からこの場所で営業している。
マッサージ師は17名、一般的なワット・ポー式のマッサージに比べ重量感のあるタッチが特徴だ。
先客もチラホラいる店内はキッチュな色使いで可愛いのだが、とにかく年季が入っている。案内された3階の部屋に至っては30~40年前のゲストハウスかという風情で、「大丈夫なのか?」と不安になってきた。
壁の下半分はくすんだピンク色、時間の狂った時計、ほの暗い部屋に裸電球という場末の空気。
古い香港映画の中の撃たれたマフィアが情婦と身を隠していそうだ。
母の腕は機械並みの正確さ
今回のメニューは1時間のOil Relaxing Massage、この道10年というゴップ母さんに「服全部脱いで!」と促され、台の上に素っ裸でうつ伏せになった上にバスタオルを1枚掛けられる。不安を通り越して笑えてきた。
温めた100%天然成分のオイルをたっぷり乗せられ、足の裏にぐっと体重がかかる。
ライブ疲れでパンパンになったふくらはぎを親指や握りこぶしで指圧される。
悲しいことにこの年になると筋肉痛は翌日には出ない。このあと悲劇を迎えるふくらはぎの疲労を感じ取ったゴップ母さんは機械のような規則正しい動きで絶妙なパワーを加えていく。
これが取材でなければ、この段階で寝落ちしそうな気持ち良さだ。
握りこぶしや腕、肘まで使って背中一面をゴリゴリと大きな動きで念入りに解きほぐしてゆく。
何でこんなことになっているのだとゴップ母さんがふふふと笑う。
内臓の活性化までも実感!
時々ツボに入り「うっ」と声が出そうになるのだが、ギリギリ痛くなる手前で加減している。
うつ伏せから仰向けになり鎖骨まわりや胸をぐっぐっと押していく。さらにお腹に移り内臓の上から流すように強めに押していく。食べたばかりではないのに胃や腸が活性化している音がする。
前夜の疲れが残る二の腕は裏側を重点的に揉まれる。
ゴップ母さんは何でも分かっているようだ。私が何をしていたのかもすべて。
余りの気持ち良さに今どこで何をしているのかよく分からなくなってきた。
このひなびた部屋が90年代のスタイリッシュなウォン・カーウァイ映画に出てくる部屋のような気にもなってきた。
細い階段をトニー・レオンが駆け登ってくる妄想にふける。
1時間のマッサージが終わった時には、腕は上がりふくらはぎは嘘のように軽くなっていた。
「気持ち良かった!」と思わず口にするとゴップ母さんは「3時間はやらなくちゃね」とふふふと笑う。
間違いなくまたここに来る気がする。こことピンクのカオマンガイのハシゴなんて最高だ。
ひとことまとめデータ
内装/キッチュでアジアン
スタッフの対応/親戚のおばさんのような身内感。ほっこり
施術前の気持ち/どローカル。今度ばかりはダコにハメられたのか?
施術中の気持ち/うっとり、今ここどこ?
施術後の気持ち/しゃきーん、体生き返りました!
Yaluemchan Massage (อย่าลืมฉัน)
場所 491/5 Ratchaprarop Rd.
→プラトゥーナム交差点からパラディウム・ワールド・ショッピング側の歩道を北へ約200m、
ラチャプラロップ通りソイ2と4の間。
電話 0-2651-7216、082-449-8078
時間 9時~24時 無休
料金 Oil Relaxing Massage 60分400B、90分600B、120分750B、Thai Body Massage 60分200B、120分380B、Foot & Leg Massage60分200B、120分380B
Wi-Fi無料、10時間マッサージを受けると1時間無料のスタンプカード有。