ちょっトリップ

バンコク近郊のおためしワンナイト・トリップ

アユタヤ発かバンコク発かを選んで川をゆく 24時間チャオプラヤークルーズ

目先の変わったツアーを企画運営しているローカルの旅行会社があるそうだ。ならば在タイの長いすれっからしの自分でも楽しめるだろうとダコ編集部からの誘いに乗る。会社名はアジアン・オアシス。これが変わったどころか、冒険好きでなければ楽しめない、あり得ないものだった。のんびりとハプニング連続の1泊2日のクルーズ体験がここに。

 

書く人:みき輔 たったひとつのおぼえたて落語「しじみ売り」を時間があるときに反駁しています。
食堂で料理を待っているときとか。

バンパイン宮殿近くの美味

ライスバージ(米運搬用の荷船)を修復したMekhala号は、オープンデッキとラウンジ兼ダイニングの、階下に豪華ヨットキャビンのような機能的な寝室を6つ配備し(しかも全室シャワー、トイレつき!)、アユタヤを往復しているという。遺跡の見学はない。そのかわりにモン族の村を訪ねるそうだ。

9月13日11時。
10人乗りのバンはダコ編集部のタイ人4人、モニターの日本人女性2人、そして自分を乗せて高速道路を飛ぶようにアユタヤのバンパイン宮殿へ向かった。

12時5分。
近くの川べりのレストラン「Yang Deaw Restaurant」へ。タイ人スタッフがオーダーする「間違いのないもの」はたしかに間違いないのだが、「プラー・ナムグン・チューチー(カレーペースト和え)」は格別だった。地元ではこう呼ばれているそうだが、川魚という以外、何の魚かだれもわからない。銀ダラのような食感、脂がのって、ひれはカレイのエンガワのような味わいだ(後にプラー・ヌアオーンという川魚の仲間と判明。入手困難な高級魚らしい)。

まったく揺れのないパノラマクルーズ

14時。
バンパイン宮殿駐車場の運河を隔てた向こう岸にMekhala号は停泊していた。乗組員たちは我々7人の手をとり、荷物をとり、船上に招き入れてくれた。お客は我々だけだった。船が走り出す。水面はところどころ鏡のようでまったく揺れがない。周りの景色が巨大なパノラマのようにこちらに迫っては過ぎ行く。岸辺の水上住宅のほとんどが冠水していた。船着場は腰まで水に浸かっている。

15時45分、
モン族の村へ入るための船着場、パトゥムタニー県の「サラデーン寺」もそうだった。村の見学はあっさりと中止となり、さらに下流に向かう。小屋のような家からどっしりした家や倉庫が目立ち始める。停泊場所の「ガイ・ティア寺」に16時10分着。船上で(タイ人スタッフが持ち込んだ)ビールやラム酒で上品に盛り上がる。

19時。
乗組員がチークのテーブルにクロスをかけ、夕食がふるまわれた。一般的なタイ料理だが、一人ひとり皿に別盛りされたものが順に出されるためコース料理のようだった。

橋をくぐれない

翌朝6時。
薄ベージュの空から薪のような匂いが立ち上る。

6時半、
パトゥムタニー県のオールドマーケットへ立ち寄るため出発。

8時、
マーケットからバンコクを目指し出発。

8時10分、
パトゥムタニー橋2をくぐり次のノンタブリー橋が見えたところで、
船上のマネージャーが、「あの橋はこのへんで一番低く、下をくぐるのに相当な腕がいる」と言う。本当だ低い。水かさもある。

8時20分。
船は舳先を上流に返しバックで橋下への侵入を試みる。流れは下流に向かうため、だめだとわかったらすぐ全速前進で上流へ引き返すためだ。なんどか通過を試みるが、あと数センチのところで屋根の一部が橋の鉄骨に衝突しそうになる。砕石を積む、繋がって300m近くある艀が試行錯誤を繰り返した挙句、屋根の一部を壊しアンテナを折りながら無理やり通過するのを見た。これは真剣勝負のようである。Mekhala号の船長はイチかバチかということはしない。川の水を汲んでデッキの舳先に重石とするが、あと一歩というところ、あと2センチ橋が高ければというところで慌てて上流へとエンジンを全開させ引き返す。

2時間の休憩後、突破

9時50分。
我々を楽しませてくれたスリル満点のショーは中休みとなり、船は水かさが少し下がるまで近くの桟橋に係留される。時間通りにバンコクへ帰る気はすっかり失せ、のんびり昼寝することにした。

11時35分。
船長が意を決したようにノンタブリー橋に近づき、静々と橋の下へバックしていった。エンジンの音を絞るようにしてゆっくりと進入を試みる。すでに船体の半分が橋の下に入った。ほかの乗組員もテーブルやイスの上に立ち、屋根と橋の鉄骨との距離を目で測り、大声で船長に指示している。突如、雷鳴のような不気味な音と共にファイバー製の屋根の一部がデッキに飛び散った。そのまま鉄骨と1、2cmという間隔を保ちながらゆっくりと橋の下をすり抜けていった。拍手を贈ろうとしたが、デッキの上に置かれた無残に引き裂かれた屋根の一部分がそれを押しとどめた。

Mekhala号は何事もなかったようにクレット島を過ぎバンコクへ向かった。しばらくすると目の前に王宮とワット・アルンに挟まれた観光客を乗せたボートがひっきりなしに行き交う、いつものチャオプラヤー川の慌しい風景があった。

13時45分。
サートーン船着場先の寺院、ワット・ヤンナワ桟橋に無事到着。船上でのんびりしていながら予期せぬ出来事ばかりの24時間の船旅だった。が、旅の面白さというのは予期せぬことに遭遇することにあったなと、これまでを振り返ってひとりほくそ笑んだ。

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