君と100回目の屋台
蒸し暑い夕暮れ時、ぼくはその店のご主人と川沿いの席に座っていた。一度で料理と雰囲気の虜になった店だ。
周囲は木々が生い茂り、木陰を吹き抜ける風が心地よい。細い運河の上に張り出した筏状のテラス席には座卓が並ぶ。
足元が掘りごたつのように開いており、爪先で水の感触も楽しめる。清涼感と静寂に包まれたこの店は、屋台価格で料理を提供してくれるオアシスだ。ビールを売っていないのが残念だが、代わりに冷たいハーブドリンクが喉を潤してくれる。
雰囲気と独創的な麺料理が特長のこの店、代表選手はクイティアオ・ソムタムだ。汁なし米麺とソムタムのフュージョン料理で、具だくさんだから食事にも十分なボリュームだ。
クイティアオ・ソムタム
同様のメニューでは、青いマンゴーを使ったクイティアオ・マムアンがある。ナムドークマイ種の香りに包まれた、間食にもぴったりな一皿だ。
そして、パヤースコン・ノーン・ナイ・スアンプルー。ハート型に盛り付けた可愛らしい麺料理だ。パヤースコンは豚の王、スアンプルーはプルーという豆(四角豆)を敷き詰めたもの、つまり四角豆の庭で寝る豚という意味だ。茹で卵と海老で飾り付け、中には甘辛い自家製唐辛子味噌とバミーが潜んでいる。
パヤースコン
最後は、1日1kgしか売らないという貴重なグリーンカレーだ。ペーストは、ラーチャブリー県出身の祖母のレシピで自家製。ローカル風のこってり甘めが良い。具材は鶏や豚、魚など日替わり。ご飯にもカノムジーンにもよく合う。
この独創性、いかがだっただろうか。連載100回目という記念すべき時は、安くてうまいだけではない、特別な店を紹介したかった。
100回、つまりこの8年間、食事に付き合ってくれてありがとう。どうぞこれからもお付き合いください。月イチで。
クイティアオ・ルアンペー
若き店主フルックさんが「筏の家」を意味する店を始めたのは約10年前。米麺とソムタムを組み合わせたのは、料理上手で遊び心のある父親のアイデアだそう。好みで調味料を足せる懐の深い汁なし米麺に、甘酸っぱいソムタムを合わせてみたら大成功。ソムタム入りは40B、マンゴー入りは45B、パヤースコン60B、グリーンカレー35B、そしてハーブドリンクは10B。この環境でこの値段、米麺同様に懐の深さを感じるよ。
DATA
時間:8時~16時 日休
電話:0-2844-2316、08-3921-4445