美味しい食堂を知っていることは、タイ生活を過ごす上での重要なポイントの一つと言っても過言ではありません。特別な日に食べるコース料理やビュッフェもいいですが、食べることだけを重視し、ぶっきらぼうに盛られたひと皿もまた格別です。なかなか挑戦できないという人も多いと思いますが、まずは「Poon Lert Room(プーン・ラート・ルーム)」からその一歩を踏み出してみませんか。
ミシュランも認めた伝説の〝ぶっかけ飯〟
1936年から変わらずに提供され続けているひと皿があります。そのお店の名前は「Poon Lert Room」、看板メニューは「カオ・ナー・ガイ」。角切りにした鶏肉を醤油ベースの餡で煮込んでご飯の上にかけたシンプルな〝ぶっかけ飯〟を求めて、連日多くのお客さんがお店に足を運んでいます。

不動の看板メニュー「カオ・ナー・ガイ(60B/80B)」。醤油ベースの餡は日本人の口にも馴染みやすく、ご飯を食べる手が止まりません。ご飯を中華麺に替えた「バミー・ナー・ガイ(60B/80B)」もあります
女性オーナーとして、お店を切り盛りするのは3代目のファンさん。創業者はファンさんの祖父のお兄さん、ロア・ガーテンさんに当たり、おじいさんがお店を手伝った後にファンさんの父親が跡を引き継いだと言います。
現在はヤワラートから10分ほど離れた交差点の一角に食堂を構えていますが、創業当初はロアさんが単身、天秤棒にご飯と煮込んだ餡をぶら下げて売り歩いたのだそう。その姿が今ではお店のシンボルとなり(一部のファンからは伝説と言われ)、スタッフが着けるエプロンやペットボトルにイラストで登場しています。
華僑であるロアさんが慣れ親しんだ「カオ・ナー・ガイ」は近所で評判となり、1970年に現在の場所で食堂がスタートしました。オープン当初は1品だけだったメニューは、年月が経つにつれてラートナーやパッシーユ、牛肉のオイスターソース炒めといった広東料理が仲間入り。「カオ・ナー・ガイを食べられない人でも、うちの味を楽しめるように祖父や父の代にメニューが増えました。2019・20年と連続でミシュランのビブグルマンに選んでいただきましたが、私たちがやることは変わりません。毎日、皆さんが楽しみにしてくれる〝いつもの味〟を届け続けたいと思います」。
1日に100キロ以上の鶏肉を消費
鶏肉・餡・ご飯が口の中で一つに!
自慢の「カオ・ナー・ガイ」を作るには、新鮮な鶏肉が欠かせません。旨味が詰まった骨付き鶏を角切りにし、煮汁と一緒に強火で一気に炒めた後に、醤油ベースの調味料を入れた大鍋でじっくりと煮込んでいきます。ポイントは、片栗粉の量とタイミング。とろりとした餡に仕上げるために、最後まで気を抜けないのだそう。1つの大鍋に1回10キロ、1日に100キロの鶏肉を使うほどに注文が入る理由は、当たり前のことを丁寧に繰り返す。そんな姿勢があるからなのでしょう。
「お店を長く続ける上で一番大切にしているのは、お客さんです。お店の味を守り続けているのもそのためです。お客さんの期待を裏切るわけにはいかないですから」(ファンさん)。
そうして作られたひと皿は、「美しさよりも美味しさ。まずは食べてみろ」と言わんばかりの潔さ。 たっぷりとかけられた餡が艶やかで食欲をそそられます。口に運べば、熱々の餡にゴロゴロと入った鶏肉、ご飯が三位一体にとろけ合う。一見、餡かけソースが重そうに見えるかもしれませんが、ご心配なく。鶏の旨味が凝縮されたスープが餡をマイルドに仕上げ、どんどんと胃に収まっていきます。あえて少し冷ましたご飯を使い、餡に絡みやすくしているというこだわりも美味しさを倍増。小さな子どもでも食べやすいため、3世代で通い続ける家族もいると聞きましたが、それも納得です。
コロナ禍に入り持ち帰りのみで営業していた同店ですが、7月からは店内飲食を再開する予定とのこと。お店の外に広がるタイの日常を眺めながら、絶品ぶっかけ飯をお楽しみください。
オーナーへのインタビューはこちらから!
https://www.daco.co.th/information/340098/
Poon Lert Room
住所:562-566 Luang Rd.
(MRTワット・マンコン駅から徒歩10分)
電話:02-688-9254(タイ語)
時間:火~日 9:00~17:00(月曜休み)
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