バスを予約したり、宿を取ったり、ウシガエルを食べたりのまえだゆうきさん。いよいよ、本来の目的であるブックフェアの準備へと取り掛かります。
タイのブックフェア事情
意外な事に、タイではブックフェアが盛んだ。
月に1回は必ず、どこかの都市で大掛かりなイベントが開催されている。
自分は去年、タイ人の友達の勧めで、コンケーン大学(東北地方)のイベントに出店して以来、4回に渡って各地でブース出店をしているが、どこのブックフェアも学生や若者が沢山で、とても賑わっている。
※タイのブックフェアは、日本でいうところの「コミケ」と「デザフェス」と「古本市」を混ぜて3当分にしたような感じのイベントだ。
ステージ上でアニメやゲームのコスプレをした大学生たちがコスプレを披露しているかと思うと、一方では古書の投げ売りが行われていたり、ちょっとおしゃれなアートグッズが売られていたり、中国から輸入された格安のおもちゃが売られていたりと、なかなかにカオスでバラエティに富んでいる。
そんなタイのローカルで密かな賑わいを見せているブックフェア。
3回目の出店ぐらいで気づいたのだが、ブックフェアに出店する出版社やディストリビューター(卸売業者)、個人事業主の人たちは、大体顔ぶれが毎回同じで、会社の壁を越えて皆繋がりあっている。
気になって詳しく話を聞いてみると、タイには書籍販売の為の大きな団体があり(Pubat:プーバットという)、そのプーバットが主催するイベントに、プーバットのメンバーたちが参加して販売している。という構図になっているのだ。
プーバットの会員になると、会場の予約や会場費の面で優遇を受けられる。
私は、タイの友達に頼んで煩雑な書類の手続きを手伝ってもらい、審査を受け、外国人としては初のメンバーに加入してもらい、晴れてグループメンバーとして、タイの各地で絵本を売り歩いている。
毎月毎月、70~100組近くのメンバーが、北はチェンマイから南はハートヤイまで移動しながら本を売り歩く様子は、文字通り、旅のキャラバンなのだ。
ちなみに、ブースからブースへの荷物の運送は、プーバット専用の運送会社が格安で行ってくれる。
(郵便局の半分ぐらいの値段でやってくれる)
イベントの前日、セントラルウドンタニーの4階のイベントホールに行くと、テープで仕切られたブースの場所に、ブースの看板と長机、送った荷物が積み上げられており、身ひとつで行っても準備に取り掛かる事が出来るのだ。
ブースの設置
さて、早速箱を開梱してブースを作っていく。
販売する商品は、絵本の他に、ポストカード、缶バッチ、アクリルキーホルダー、Tシャツ、ステッカーと幅広く取り揃えてある。
フリーランスになる前に、タイで現地採用として働いていた時分から、給料の一部(いや大半)をグッズ製作にぶち込み。
ブックフェアで利益が出るようになってからは、その売上もグッズ制作にぶち込み、商品のラインナップを増やして来たのだ。
ブースが少しでもお客さんの目に留まるようにと、ホームプロで買ったスチールラックを組み立て、ハンガーラックを組み立て、ラミネートした看板を貼り、装飾を施していく。
そうして準備開始から3時間、これから10日間絵本を売るためのブースが完成した。
果たして絵本は手に取ってもらえるのか、グッズは売れるのか。
何回ブースをやっても、この不安と期待の入り混じったドキドキだけは慣れそうにはない。
今回の旅の目的であるブックフェアがいよいよ始まる。
(おまけ)グッズ販売の台所事情
これから自分の作品を販売してみたい!オリジナルのグッズを作ってみたい!というクリエイティブな読者の方に、(聞かれてもいないのに)絵本作家の台所事情を明かすおまけコーナー。
今回はポストカードを例にとって、グッズの発注について詳しく話していきます。
さて、日本でも作品展、展示会の時には必ずといっても良いほどに作られるポストカード。
私がいつも発注している業者の場合、片面印刷で100枚発注で1枚4バーツ(約16円)のコストがかかる。
更に、1枚1枚プラスチックフィルムの袋に入れてもらうと+3バーツ。
マシュマロ紙などの手触りの良い紙にしようとすると+3バーツ。
色々オプションをつけると、なんだかんだで1枚10バーツ(約40円)はしてしまう。
これでは1枚20バーツで販売したとしても利益は10バーツ。あまり旨味のある商売とは言えない。
シラチャで会社勤めをしていた頃の私は、ブックフェアの為に10日間も休みを取るなんてとてもじゃないけど出来なかったから、ちまちまと小さなロットで発注を繰り返していたが、独立を決めてからは千枚単位で発注してコストを削減。
更に、何度も交渉を重ねた甲斐あって、今では袋入りで、上質な紙を使って1枚4バーツという所まで辿り着いた。
これならば、20バーツで売って1枚あたり16バーツ(約64円)の儲けになるから悪くはない。
もちろん、最初にものすごい量の在庫を抱える訳だからリスクはあるし、部屋のほとんどのスペースは段ボールで埋め尽くされるから、部屋というよりはオフィスに寝泊まりしているような日常を覚悟する必要はあるが…。
絵本作家業という職業は、こういった地道なコスト管理をしつつ、売れ残りのリスクにいつも怯えつつ、それでも常に新しい作品作りに魂を燃やし、筆を動かす仕事の事を指すのである。
『絵本作家タイで絵本を売る!シリーズ』
このシリーズは、タイで活動する日本人作家、まえだゆうきが実際に地方に絵本を売りに行き、生計を立て、旅をし、人々に絵本を届けるまでの等身大の日常を、移動、宿泊、食、イベントと、様々な角度から掘り起こす企画です。
シリーズを通して、タイを旅し、物を売る事の楽しさを存分に味わってくださいね!
宜しくお願いします!
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まえだゆうき
「絵本作家・作家」
2022年、カバン1つと絵本のデータだけ持って来タイ。
大冒険の末にバンコクで商業出版を果たし、タイで唯一の日本人絵本作家としてタイに移住を決める。
2024年より絵本作家として独立をし、活動を続けている。
■2024年から絵本作家としてタイで独立
■現在タイで2作の絵本が商業出版中
■日本でも商業出版が決定、現在執筆中
応援宜しくお願い致します!