男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:文化人類学 片山 隆裕
佐賀人気が急上昇中
筆者は、佐賀県の自宅から福岡市内の大学に通勤していますが、博多駅や佐賀県各地で、近年、タイ人観光客、特にタイ人女性観光客をたくさん見かけるようになりました。
観光庁の統計によると、訪日タイ人観光客数は40万人(2014年)から74万人(2015年)とこの1年で1・85倍に増加していますが、入国ビザの撤廃やLCCの「バンコク→福岡」便就航などによって、「一生行くことがなさそうな都道府県」全国1位の佐賀県でも、370人(2013年)、1480人(2014年)、5190人(2015年)とタイ人観光客が急増しています(佐賀県国際観光部)。
こうしたタイ人による「佐賀人気」は、ドラマや映画のロケが佐賀県各地で行われたことと関係があるようです。映画やドラマに登場する日本人男性イメージに関しては、映画『クーカム』で日本兵コボリを演じたバード・トンチャイ、ナデート・クギミヤなど、人気俳優を通した日本男性像が基礎にあることは明白です。
近年でも、タイ人女子留学生がバード演じる旧家の日本人男性と伝説の着物を作りながら愛を育むドラマ『きもの秘伝』(2015年)が、佐賀県をはじめとする九州各地で撮影されました。
映画『TIMELINE』(2014年)、ドラマ『STAY―私が恋した佐賀』(2015年)などでは、タイ人女性が日本に留学し、唐津、祐徳稲荷、伊万里など佐賀県の観光地を訪れるシーンが出てきます。
タイの人気俳優が演じる日本男性像、映画に出てくる日本の原風景としての佐賀、佐賀を訪れる主役の人気女優などの相乗効果によって、タイ人による佐賀人気が創り出されているのかもしれません。
タイ人女性にとって「彼氏にしたい人の国籍」ナンバー1(『訪日タイ人観光センター』)を誇る日本人男性ですが、コンテンツツーリズムやフィルムツーリズムによって、ドラマや映画を追体験したいと願う彼女たちの観光行動は、マイナー県佐賀の男たちにチャンスをもたらしてくれることになるでしょうか?