男と女の学際研究

タイ女は「専業主婦」に憧れる? vol.49

 

男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
5人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。

今回の著者:文化人類学 片山隆裕

 

タイで、長年研究を行ってきた私は、あらゆる分野で女性が働き、活躍しているところを見てきました。十数年前、家族計画やエイズ問題の調査のときに訪れた公衆衛生省では、担当部局の職員さんの多くが女性でしたし、数年前、在外研究でお世話になった国立C大学の日本語学科でも女性の先生方が大半を占めておられました。デパートやコンビニ、商店や屋台、また農家にいたるまで、タイでは多くの女性が働いています。

 

タイ女が働き者なのは、事実だった?

 

事実、国際労働機関の統計(2012)によれば、タイにおける女性の就業率は64%と、調査対象となった174ヵ国中32位で、世界平均の48.1%、日本の46.1%を大きく上回っています。

また、日本の女性労働力率が、依然として、結婚後の育児期間に低下する「M字型」を示しているのに対して、タイは、結婚後の育児期間中も働き続ける、あるいは働き続けなければならない女性が多い「逆U字型」を示しているといいます。

 

働く女性とテレビ広告

 

こうした現実に対して、興味深いデータが存在しています。テレビ広告におけるジェンダーと労働役割に関して、タイと日本を比較したポンサピタックサンティによると、タイは日本よりも女性就業率が高いにも関わらず、テレビ広告では日本に比べて「働く女性」の姿が登場するのは意外と少ないというのです。テレビ広告に登場する女性像については、現実により近い「働く女性」の姿というよりも、「専業主婦」イメージが比較的強いことを指摘しています。これは従来の「テレビ広告におけるジェンダー役割は現実を反映している」とする諸々の研究とは異なる結果です。テレビ広告の中では、現代タイの女性たちが憧れている、あくせく働かなくても優雅に生活ができる「理想的な主婦」イメージを提示することによって、広告効果をねらっているのかもしれません。

 

参考資料:ポンサピタックサンティ・ピヤ「テレビ広告におけるジェンダーと労働役割―日本とタイの比較から」2011年

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