男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~
5人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。
今回の著者:心理学 平松隆円
2015年末、日本で一つの最高裁判決が下されました。女性だけが離婚後に再婚禁止期間があるのは、憲法違反ではないかと争われた判決です。
もともとは、明治時代に女性が離婚後すぐに再婚・出産した場合、だれが父親かわからなくなるのを防ぐことが目的でした。
いまではDNA鑑定もあるため、再婚禁止期間を廃止してもいいのではと考える人が、たくさんいます。
「だれが父親か」を重視する日本
日本人は、その女性の子供の父親が、いったいだれなのかということを、すごく気にします。それは、日本が父系社会だから。家の財産は男系の子供が継承するため、実子かどうかは重要な問題です。
ですが、これはあくまでも現代の日本社会に限った話。平安時代は母系社会。女性の存在が強い時代でした。家の財産は娘が継承し、母方の影響力が強かったのです。
だからこそ、栄華を極めた藤原家は、息子ではなく娘を欲し、娘を天皇の后にすることで権力をもったんです。そこでは、だれが父親だなんてことは重要ではありませんでした。
「離婚すれば父子が他人」のタイ
このコラムで、片山隆裕が「男性が女性の家に婿入りする」というタイ社会の婚姻形態を紹介しています(第4回)が、いわばこれも母系社会の特徴です。そのため、子供は女系に属します。
かりに、タイ人夫婦が離婚をしても、子供は母方が面倒をみ、離婚した元夫は一切の面倒をみません。その代わりに、男性が再婚すれば、自分の子供でなくても自分の子供のように新妻の連れ子の面倒をみるんです。
じつは、日本で女性の再婚禁止期間が議論されたとき、私は、DNA鑑定の有無ではなく、タイのように好きな女性の子供であれば、実子でなくとも実子のように愛せるかどうかの議論が必要ではないかと感じていました。
もし、子供のいるタイ人女を彼女にしたい、結婚したいと思ったら、その子供のことも愛せるのかをちゃんと考えておく必要があるんです。