クイティアオ・ヌア・トゥン
秘伝のレシピと誓いの言葉
「信じてください、誓ってもいいですから!」
自分を信じてほしいときのタイ人の常套句だ。神聖なものに、何かを賭けて誓約する効果は絶大だ。聖なるもの前で嘘はつけないからね。
「何か」で一番威力を発揮するのは、やはり命だ。現代は一部で宣誓の重みは減ったが、ほとんどの人は軽々しく口に出さないと思う。特に口先だけの人は。
なぜこんな話をしたかというと、今回の屋台料理には宣誓が絡んでいるからなんだ。
この料理のレシピは、店主がアユタヤーで有名米麺店を営むお姉さんから受け継いだという。店主にレシピを教える条件が「絶対に口外しないと誓うなら」。そして店主は誓った。今でも誓いは守られていて、店でも店主と厨房を仕切る娘さん以外は知らないという。
さて、頑なに守られている秘伝の味はというと、誓いを立てさせるほど考案者のこだわりが感じられる完成度の高さだ。後から一切の味付けを必要としない、非の打ちどころのないバランスなんだ。一般的な牛煮込みにありがちな、ツンとする漢方臭さもない。
最後に散らした揚げニンニクの香りが全体をマイルドに中和している。具は、カイラン菜やモヤシに牛肉団子、レバー、そしてさいの目に切った牛煮込みだ。辛いのが好きなら唐辛子酢を入れてみよう。店で毎日炒った青唐辛子を入れた特製酢だ。牛肉を食べない人のためにアレンジされた、豚や鶏煮込みの麺もお勧めだよ。
秘伝のレシピについて訊ねると、貴重な牛ゲンコツでだしをとったスープと、スパイスや調味料と共にミキサーにかけた牛肉のゆで汁を混ぜ合わせるのだという。これで化学調味料に頼る必要のない、完璧なスープが出来上がる。
レシピについてこれ以上訊ねるのはやめよう。僕まで宣誓させられたらたまらないからね。
パー・オーン
今回話をしてくれたエーさん(46)は、店名にもなっているオーンおばさんの娘さん。経営から厨房まで取り仕切る、この店の大黒柱だ。この場所でオーンおばさんが屋台から始めて23年になる。当時はまだこの辺りに飲食店がなかったため、今でも伝説的な店として地域の人々に愛されている。
この店の素晴らしい点は味だけでなく、清潔さもある。陶器の丼も趣きがあり、いかにもうまそうだ。これで一杯50B。大盛りは70Bだ。
DATA
時間:8時~16時半 月休
電話:0-2747-1738、08-0992-0323