フードトラックの舞台裏・オーナーに本音を突撃取材!
ジャパニーズ・ソウルフード 「福ちゃん」オーナー 福崎 栄治さん
フードトラック・ビジネスは果たして儲かるのか? オーナー数人に尋ねて回ったけれど、売り上げやコストなど、お金が絡む所はなかなか本音で話してもらえない。そこで、編集部が把握する限り、現時点では唯一の日系フードトラックである焼きそば屋の「福ちゃん」オーナーの福崎栄治さんに取材を依頼、2時間以上にわたって根堀り葉堀り訊かせていただいた。福崎さん、儲かりまっか?
初期費用は20万B
ダコ(以下、ダ):どうしてフードトラック事業を始めたのですか?
福崎さん(以下、福):私はゴルフ案内業(さくらゴルフ)がメインで、これまでにもスパや射撃、レンタカーなどの事業に関わってきたのですが、どれも日本の観光者向けなんですね。
そうすると、昨年の爆弾テロのように何か起きてしまった場合、お客さんが長期間途絶えてしまって、数カ月は収入がなくなります。
そこで、タイ人向けの安定したビジネスを始めたいと思ったんです。そうすれば、いざ観光客がいなくなってもタイ人のスタッフに仕事がない、ということもなくなります。
もともとは屋台で日本のお祭りのような夜店をバンコクでやりたかったのですが、ちょうどフードトラックが増えてきて。コストは屋台よりも高いですが、フードトラックの方が成功しやすいのでは、と考えたんです。それに、ゴルフ業のタイ人スタッフやドライバーなどの仲間たちと何かを一緒にやって、彼らに成功を体験させてあげたくて。
ダ:準備にかかった期間や費用はどれくらいでした?
福:2015年の頭くらいからやろうと思い始めて、実際にオープンできたのは9月1日でした初期費用は全部で200万Bくらい。車を日本で作って輸入したせいで高くなってしまって。けど想定内です。
改造はタイの方が上手
ダ:なぜ日本で車を?
福:当時はタイにフードトラックの製造業者がないと思っていたのと、日本で車関係の事業をしている友人が共同出資してくれることになったので、その友人に依頼したんです。輸入なので高いし、電圧が違うので電気系統も施工しなおして1カ月、検査にも3カ月もかかっちゃった。
でも、今はタイにも製造業者がいっぱいいるので、もっと安く早く作れるし、僕は開業まで半年以上かかったけど、専念すれば1~2カ月でオープンできるんじゃないかな。
普通のトラックを新車で買って、それをフードトラック用に改造するのですが、新車が40~50万B、改造費は20万Bくらいで、車はスズキやキャリーボーイが人気みたいです。
ダ:車の改造時に気を付けたことは?
福:赤と白で日本風のデザインにすることと、できるだけ大きな鉄板を用意することくらいです。
失敗だったのはデザインかな。走っている時は着物を着ているみたいに鮮やかなんだけど、お店として展開すると中が寂しい。壁を開いて展開できるのも前面だけ。タイのフードトラックは前後左右に展開できたり、壁が跳ね上がると同時にテーブルがせり出してくるなど、仕掛けも凝ったものが多いです。この辺はタイの方が上手ですね。
この失敗は2台目以降に生かしたいですね。
ダ:お好み焼きや鉄板焼きの店だと鉄板にこだわったりしてますが、「福ちゃん」の場合はどうですか?
福:専門店の場合は肉にゆっくり火を通したり、保温性を考えて鉄板を分厚くしたりするんですが、うちは炒めるだけなので鉄板自体は普通ですね。
ほかの店だと作り置きを鉄板の脇に置いておいて注文が入ると炒め直して出したりするけれど、うちの場合は注文を受けてから炒めて、いつもできたてを提供するようにしています。
ダ:認可関係はどうなっていますか?
福:まず陸運局に車を持って行って、営業車として審査してもらい認可を受けます。これは「公道を走ってもいい」という認可です。
また、別に飲食業として営業するための役所の認可も必要でした。最近はフードトラックが増えて役所の方も慣れているらしく、思ったよりもスムーズに進みました。
販売場所は引く手あまた
ダ:なぜ焼きそば屋台なんですか?
福:まず、厨房が狭くて2人立つと満員なので、メニューは2、3種類に絞った方がいい。焼きそば専門にしたのは、夜店料理ってレシピが簡単で、だれでもおいしく作れるでしょ?
それと、焼きそばパンがタイで流行るんじゃいか、と思って。爆発的ブームを期待してたんですが、まだその兆しはありません(笑)今後フランチャイズ展開をするつもりなのですが、夜店の料理みたいに簡単な方が新しい店を増やしやすい。
ダ:販売場所ってどうやって探しているんですか?
福:ブームなので販売場所を探すのはぜんぜん難しくありません。オープンしてすぐショッピングセンターやマーケット、イベントのオーガナイザーからどんどん「出店しませんか」って電話がかかってくるようになりました。引く手あまたですね。
今はデータ収集の目的も兼ねて、できるだけいろんな場所で売るようにしています。
販売場所は、大きなイベントへの出店は1カ月以上前に決まるので、それを軸にして、ほかの日にどこで売るかを決めていきます。シーナカリン通りの鉄道市場のようなナイトマーケット、「メガバンナー」のような郊外のショッピングセンターなどですね。
今はデータ収集のため、「売ったことがない場所」に優先して行くようにしていますが、月の売り上げも確保しないといけないので、売り上げのいい場所にもう一度行く日もあります。販売スケジュールはスタッフと相談しながら決めています。
しかし、場所選びには苦労しますね。売れるだろうと思って行っても全然売れなかったり、逆に売れすぎて早い段階で売り切れたり。でも、今のうちに失敗しておけば、それがノウハウとして生かせますよね。
豚肉焼きそば79B
課題は平日の売り上げ確保
ダ:場所によって売り上げってそんなに変わるんですか?
福:場所が違うと客層も変わるし、曜日によっても変わりますよ。うちでは1日7000Bの売り上げを目標にしているけれど、1万Bの日も2000Bの日も、ゼロの日もある。
これまでの最高金額は約3万B。サイアム・パラゴンで日本旅行フェアがあった時で、350食も売れて驚きました。途中で売り切れそうになって、急いで麺を茹でて追加しないといけなかった。この時は各都道府県から観光客誘致のブースが出て、日本に興味のあるタイ人がいっぱい集まってましたね。
土日はだいたいイベントに出店しますが、土日はどこでも売り上げがいいので、平日が大事です。平日に安定した売り上げを確保できるかどうかが、ビジネスとして成功するかの肝になるんじゃないかな。うちも独自の工夫をしています。
ダ:一番いい販売場所ってどこですか?
福:なんと言ってもシーナカリン通りの鉄道市場ですね。あの広い所にお客さん、店のスタッフも含めると週末なら10万人は余裕でいるでしょう?
あの人混みはいつ見てもすごい。日本から来たプロのテキ屋さんを連れて行ったことがありますが、「ここで勝負してみたい!」って興奮してました。
ダ:場所代やその他のコストはどれくらいですか?
福:場所代については1日あたり無料~3000Bで、その他に電気代が別途かかります。都心部のいい場所になるほど高いですね。これが土日から次の土日まで9日間開催される、場所代3000Bのイベントの場合、仮に毎日出店しちゃうと最高で3000B×9日間で2万7000Bもの場所代になっちゃう。
毎日人が来て売れるならそれでもいいけれど、イベントは「土日は混むけど平日はガラガラ」という場合も多いので、9日間のうち土日の4日間だけ出店して、残りの平日5日間はほかの場所で売るように工夫しないといけません。
材料費は、その日に仕込む量によって変わりますが5~10万Bくらい。場所代、材料費、スタッフ4人分の人件費などを合計すると月々のコストは15~20万Bといったところです。
僕の場合はタイの若い人に食べてもらうために売り値を低めにしているので、タイ産で安いけれど味のいい麺を探したり、材料を一度に大量に仕入れて仕込むようにしたり、コストを抑えながら日本の味を出すのに苦労しています。調味料代もバカにならないですよね。
でも、安く売って若い人が焼きそばの味になじめば、「これ、学生の頃よく食べてたなぁ」って将来も食べてくれるでしょう?
プラトゥーナムの商業施設「プラチナム」前。
ここにはいつも何台ものフードトラックが並んでいて毎日がお祭りのようだ
開店4カ月目で収支は「とんとん」儲けるのは2号店から
1台目は赤字覚悟
ダ:売り上げの方はどうですか?
福:月の売り上げは、金額は内緒ですが、じわじわと伸びていますね。最初の月は仕入れの量を間違えてしまって大きい赤字になりましたが、始めて4カ月目でとんとんの所まで来ました。
ダ:今後売り上げは伸びていきそうですか?
福:1台だけのうちは難しいでしょうね。半年から1年は赤字覚悟。データやノウハウ収集のつもりでやっていって、儲けを考えるのはフランチャイズで2台目ができてからだと思ってます。
店を増やせば手間が抑えられて、より利益が出やすくなります。1台だと同じスタッフが仕入れも調理も販売もやるけど、台数が増えて人数が増えれば、分業化して無駄をなくし、より利益率を上げられます。
ダ:フランチャイズについて詳しく教えてください。
福:今はしっかりしたシステムを作るために準備を進めているところで、今年の半ばくらいから展開し始めるつもりです。初期費用は新車50万B、改造費20万B、保証金10万B、加盟金10万B、研修費10万Bの計100万Bくらいで始められるようにして、1カ月くらいで開業できるようにしたいですね。
各種登録手続きも代行して、仕入れも一緒にするので手間がいらない。販売場所も、1号店の売り上げデータがあるので効率的に決められます。
月々のロイヤリティもかなり低めにして、タイでなにかに挑戦したい人の手助けができるようにしたい。料理はたこ焼き、お好み焼き、回転焼きなど、焼きそば以外の夜店料理を考えています。
まずは今年中に5台くらいフードトラックを揃えたいですね。今は1台なので、鉄道市場でも奥の不利な場所になるけど、5台揃えて「日本のお祭りゾーンを作りませんか?」って市場側に売り込めば中央のもっといい場所を確保できるし、そうすれば人の流れができて、お客さんも集まってくるはず。
数台並べば車同士の間のスペースを使って物を売ることもできる。新しい商品を売りたい人のために、委託陳列販売も考えてます。できることの幅が広がるんですよ。
また、売り場が1台分しかない場合でも、今日は焼きそば、明日はたこ焼きが出動する、という風に日替わりの展開もできます。もう知り合いで数人、すでに興味を示してくれている人もいます。
フランチャイズ展開も含めた今後の構想について、熱く語る福崎さん。
「フードトラックの先」についてもしっかりと考えている
お祭り地区をスクムビットに
ダ:ずばりフードトラック・ビジネスの魅力はなんですか?
福:初期費用が少ないことですね。100万B前後で始められるのでリスクが少ない。たとえば新しい日本の食べ物をタイで売りたい場合、いきなり店舗を構えてしまうと改装費や家賃が高い上、立地や客層を読み間違えると失敗してしまう。
でも、最初にフードトラックで売ってみれば、タイ人の客層ごとの反応が見られるし、バンコクのあちこちに行けるので、どの場所にどんな客層が集まるかのマーケティングもできる。そうしてニーズを掴んでから店舗として展開すれば、リスクを回避できるでしょう?
ダ:逆に大変なことは?
福:売り値を低く抑えないといけないので、利益が少ないですね。芸能人がSNSで宣伝するような店なら1皿150Bでも売れるかもしれませんが……。
それに、今はフードトラックが増えすぎてしまっているので、生き残りが大変です。その店ならではの特徴を出す必要があって、うちは複数台を揃えて勝負するつもり。
最終的には夜店フードトラックを10台くらい揃えて、毎日が日本のお祭りみたいな雰囲気の場所をスクムビット通りに作りたいですね。そうすれば在住者は日頃の食費を安くできるし、日タイの交流の場にもなりますよね。
従業員も法被を着てお祭り気分を演出
来るか? 焼きそばパンブーム
ジャパニーズ・ソウルフード「福ちゃん」
2015年9月にオープンした日系フードトラックで、メニューは今のところ焼きそば79Bと焼きそばパン59Bの2品だけで勝負している。すでにリピーターも多く、1日に3回食べに来たタイ人もいたとか。
現在は立地調査も兼ねて、スクムビット通りやタニヤ通りの都心部から郊外のショッピングセンター、イベントホールまで出店中で、まさに神出鬼没といったところ。出店スケジュールは下記Facebookページでチェックしよう。運が良ければマスコットの「焼きそばメン」にも会えるかも?
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タイ人が営業するフードトラックは「Food Truck Club」という業界団体に加盟して販売場所について情報交換しているようだ(加盟は任意)。イベント・オーガナイザーもこのクラブにまず連絡してお店集めをすることが多い。
福崎 栄治(ふくさき・えいじ、旧姓:宮下)
1967年(48歳)大阪府出身。タイ在住16年目。今までに、デリバリー事業「D-Store」、射撃観光事業「シューターズギャラリー」、レンタカー事業「YAMAI」を手掛け、現在はゴルフ案内事業「さくらゴルフ」のみを運営。今後はケータリング事業「FUKUCHAN」に力を注ぐ方向。








