あの先まで行ったら何か見えるかもしれない。あの角を曲がったら何か素敵なものが見つかるかもしれない。いつもの好奇心と危険を察知する小心さを伴って行ってきます、ワンデートリップ。ある日の1日ひとり旅。今回は自転車の輪行です。
旅して書く人
折りたたみ自転車を台北で買って担いできた。2年前、アソークの穴ポコにはまり、車道へフッ飛ぶ。
右肘骨折だけで済んだ。 編集部 車幹次郎
クロントゥーイの港
バンコクに来て間もないころ、貨物船の入る港ってどこだろうと漠然と疑問を抱いていた。それがチャオプラヤー川だったということがわかったのはしばらくして。そしてそれを実際に見たのが先週のこと。
今日は自転車で輪行だ。スクムビット・ソイ26からラマ4世通りに抜け、ロータス(の隣のガソリンスタンド)を左折。自転車で7分の突き当たりに港の保税区域へのゲートがある。自転車のない人は、タクシーや路線バス(ダコのバス路線図によると162番終点)で来ればいい。ゲートを正面に見て右側にセブンイレブンがあり、そのソイを入るとお寺に通じる。
道沿いの突き当たりに砦のような建物があり、そこを通り抜けようとすると渡し舟料を徴収される。クロントゥーイ桟橋。片道ひとり5B。そして……振り向くと、チャオプラヤー川に浮かぶ巨大タンカーやクレーン。ここは異国の海かと見まごう。
サイクリング公園
渡し舟で2分。反対側の桟橋には「Welcome to Bangkachao」の看板。このあたりはバンカチャオっていうのか。桟橋には1日100Bの貸し自転車()がある。
さて、自分の呼吸が聞こえるほど静かな林道を進んでゆくと300メートルぐらいの地点左手に「スリナコン・クアンカン」という公園の派手な門がある。左折して公園への緩やかな坂を登ると……、おお、ひと目で金かけたなぁ~とわかる公園が出現。広大な敷地内には4つの池があり、自転車で巡ることができる。
カヌーボートの貸し出しもあった(30B)。新しくきれいな建物があり、案内にはカフェテリアと記してあったが、今日は営業はしていない模様。林道へ戻ってまたひっそりとした道をひた走る。途中藁葺きのお茶屋が点在、建築中の一軒家のハンマーの音が遠くの空に消え去る。ミゾホウズキの朱色の花が地面に落ち、落ち葉のよう。まったく離れ小島のようにのどかだ。この林道はどこまで続くのだろう。そう思うと急に怖くなってきた。あ! しゃれこうべだ! 首狩り族の村だったか! と思ったら椰子の実だった。
公園から1200メートルぐらいゆくと大通りにでる。
そういえば桟橋で会った人が「大通りに出て右折して左折すると水上マーケットがある」と言っていた。
人っ気のない林道を黙って走っていたので、すっかり忘れていた。体重を右に傾け、右折。途中、小さな食堂で「タラート・ナーム(水上マーケット)はどこですか?」と尋ねる。向こうに見える黄色い信号が点滅している交差点を左折するそうだ。
水上マーケット絵巻
整理する。林道から大通りに出て右折して300メートルの黄色い信号が点滅する交差点を左折してこのPHETCHAHUNG RD.を300メートル進むと、だんだんとたくさんの車がひとつのソイに吸い込まれてゆく。ここが水上マーケットのソイのようだ。
見渡すと、それっぽい標識がたくさんある。BANGNAM PHUNG FLOATING MARKET。ほうほう、こんなところに水上マーケットが……わぁ、あった。凄い人だ。
ひさしがかかった運河沿いにゴザが敷かれ、小さなテーブルを囲んだたくさんのグループが、手漕ぎ船のソバ屋さんに注文している。運河に渡された丸木橋を行き交う人はひきもきらない。遊歩道は立錐の余地もない。
お花見シーズンの京都の祇園のようだと言ったら誇大妄想と言われるに違いなかろうが、突然のテーマパークの出現に虚をつかれ、
自分の発見に小躍りして状況判断ができなくなったのだ。自分もテーマパークの一部となってクイティアオをオーダーしてみる。麺はバンコクの街中で食べるものより少しもちもちしていた。うまい。
おそらく一番近い水上マーケット
ついさっきまでスクムビットのソイ26にいた自分がうそのようだ。自分にとって、このお花見のような水上マーケットはスクムビット・ソイ26の奥にあるように感じている。
バンカチャンの桟橋(正しくはカムナンカオ桟橋)から自転車で、だれもいない夏休みのような林道を黙々と走り、公園やソイへ寄らなければ20分で外国人のほとんどいない水上マーケットに着くわけだ。
帰路、カムナンカオ桟橋で巨大なタンカーを見ながらビールを飲む。
桟橋に貼ってあった地図でわかったが、この川を渡ればバンコク。こちら側はサムットプラカーン県だった。