持ち物は、小さな冒険心ひとつと、そのトリップを楽しむコツ。タイ人文化や地元の生活、おいしいご飯があるバンコク近郊のローカルなスポットへ行けば、バンコクの日常からほんのひとときエスケープ。タイ人が「ね、今度の週末、行かない?」と誘ってくれるレジャーコースをお届けします。
おすすめ係 元史跡発掘調査員のテンモー
旅して書く係 いつか「旅バカ日誌」を発表するであろう岸洋子
タラート(タイ語で「市場」のこと)。
それは庶民生活の中心地であり、至るところにある。街の路地裏タラート・卸売りタラート・花タラート・服タラート・果物タラート。そんな中でもタラートの真髄に迫るような、またタイの性質そのものを現しているような市場があった。
BTSアヌサワリーチャイ駅はバスの宝庫。駅からの戦勝記念塔をぐるりと囲む歩道橋を歩き、BTSサナムパオ駅方面へパホンヨーティン通りを高速道路の高架下まで歩く。ファミリーマートを通り過ぎると威勢の良いロット・トゥー(乗合いワゴン車)乗り場が。そこからだ。
蛍観賞で有名な「サムットソンラーン-アンパワ(Amphawa)水上マーケット」行きのロット・トゥーに乗る。ただし今回は、目指せタラートと言えども、まだメジャーな水上マーケットではない。乗り込んだら「メークローン(Mea Klong)」へ行く、と主張しよう(70B)。そう、我々はローカル・トリッパーなのである。
メークローンでロット・トゥーを降りる目印は「TRAFFIC POLICE CENTER」。ロット・トゥーを降りた瞬間にこの看板が見えたらひと安心。
辺りは庶民タラート、ここで遅めの朝食を取る。バミーと花で色づけされた青サラパオ(あんまん)を食べたが、どちらもかなりおいしい! メークローンの町に期待大である。
ごはん求め、いざ茅葺き木炭工場へ!
ここから我々はさらにソンテウに乗り(20B)、「バーン・ィイサーン(Baan Yisan)」という場所まで行ってきた。目的はメークローン特有の野菜「チャクラム」を使った人気レストラン「クン・ジャー(Khun Jaa)」でご飯を食べるために。
昔、アラブやインドの商人たちとの船による貿易で栄えたという村は、今では閑散とし、過疎化が進んだ日本の田舎を彷彿させた。しかし、そこには世界中に輸出される 木炭を生産している茅葺き屋根の工場があり、レンガを積み上げた手作りの釜でマングローブの木を燻している 。そんな風情を横目にレストランへ……、
ん、閉まっている! 第4水曜日は、何と月に一度の定休日に当たり、涙を飲んだ。
エネルギッシュ! 傘たたむ線路市場
メークローンに戻ってきた我々は、現在も使われている列車の線路の上に市場が広がるというトレイン・マーケット「タラート・ロム・フーブ(=傘をたたむ市場)」をぶらり。踏み切りの中に、そして線路の上に、それはそれは堂々と本格的市場が広がっていた。線路すれすれには列車の車体に届かない背丈の野菜などが並べられ、列車の車体に背の届く商品棚は列車が通るたびにすばやく脇に片付けられる。店の日よけ傘もその度にたたまれるので、その名前がついたという。
線路の上に並べられたテーブルで麺をすする人々。踏み切りの中に並べられた洋服。駅のプラットホームでは線路を向いてミシンの足を踏む女性。そして夕日の燃える中、線路の上を歩くという青春映画のような光景。これらがここに暮らす人々の日常だった。
「アライコダーイ(何でもアリ!)」のタイ気質を象徴するかのようなタラート。線路はある。列車は通る。だが、我々の生活もここなんだ、と力強くにぎわっていた。
ところで昼食は、というと、ここからトゥクトゥクで15分の 「ラン・デーン」へ行った。絶対にメークローン名産の 「プラー・トゥー」を食す。これだけはなんとしても実行したかったのだ。お味は……、お~っ! まるで日本のサバの煮付け。「プラ・トゥー・ター・タイアー」は、白ご飯がとってもすすむ優しい味だった。