「新鮮なカニを食べに北海道へ日帰りした」「とんこつラーメンが食べたくなって九州へ飛んだ」。私たちはときに、自分の食欲が旅の道先案内をしてくれることがあります。髙田パパもガイヤーンを食べるためだけに片道2時間、ペッチャブリー県まで車を走らせました。
次はあなたの食旅レポート、待ってますね~!
左)鏡をこのように並べて、太陽光で肉を焼く 右)あまりの大きさに絶句中の3歳児
【旅して書く係】髙田胤臣:休日は家族サービスに勤しむ父。今号の特集(402号p.15~)を担当した旅人でもある。
石田純一が食べた鶏肉はいかなるものか!?
2000年だったかと思うが、日本で観たテレビ番組で、俳優の石田純一らが鏡で太陽光を集めて焼くガイヤーンを食べに行く特集があった。ガイヤーンとは、タイ在住の多くの日本人も大好きなタイ東北地方の名物料理、「鶏肉の炙り焼き」。そのころのタイはまだB級サブカルチャー的な位置づけにあって、変わったことをしているおじさんがいるというニュアンスの内容になっていた。
なぜだか僕はその番組がずっと忘れられないでいた。あれから15年。ふと思い立ってネットで調べてみたところ、どうやらバンコクから南西に130kmほど離れたペッチャブリー県にあるということがわかり、片道2時間程度なので行ってみることにした。
約800枚の鏡で焼き上げるとは!
シラーさんの店の外観
太陽光で焼くガイヤーンの店は58歳のシラーさんの経営で、ペッチャブリー市街地を通り抜けた先にある、小さなイサーン(東北タイ)料理食堂だった。その名は「ガイヤーン・パラン・セーン・アーティット」。有名なわりには本当に普通の店で、2回も通り過ぎてしまったほどだ。
左)シラーさんとマリさん夫妻 右)ちゃんと1点に光が集中するように調整されている
目印は、鏡の装置は前の道路を渡った敷地にあった。約800枚の鏡の角度を調整し、その先にガイヤーンを置くと、およそ15分程度で焼き上がる。子供のころに虫眼鏡で黒い紙を焼いて遊んだものだが、まさにその遊びをガイヤーンに利用した感じだ。
左)ときには板で光を遮り、均等に焼けるように調整する
右)光が強いのでサングラスをして調理するシラーさん
鏡に集められた光が1点に集中するとおよそ320度にもなる。ただ置きっ放しで焼くのかと思えば、ときどき自動回転機を止めて、焼き加減を確認していた。意外に手がかかるようだった。また、焼いているのはガイヤーンだけでなく、豚肉も焼く。豚の場合は大きさや脂の量が違うので30分かけてじっくりと焼くのだそうだ。
均等に焼けるように調整する
こんなガイヤーンがかつてあっただろうか!?
左)調理をするマリさん 右)「ナムトックムー」
さて、実食と行こう。シラーさんの妻、マリさんが腕によりをかけて作ってくれるイサーン料理はどれもおいしくて評判だ。「ナムトックムー(ぶつ切り豚肉のサラダ)」は子供もいるので辛さを抑えてもらいつつ、煎り米がほどよくゴリゴリといい、味もさっぱりしていておいしかった。
子供たちもたくさん食べた
次に、太陽光線で焼かれた「ムーヤーン」(豚の炙り焼き)を食べる。ジューシーに焼き上がった豚肉はまるでチャーシューのようで、日本のラーメンに入れたら最高なのではないか。ビールが飲みたくなるほどおいしい。肉はやわらかくて、脂もほどよく落ちていた。
「太陽光線ムーヤーン」300g分
そして、たった今焼き上がったばかりの「太陽光線ガイヤーン」を食す。まず最初の衝撃は、たっぷりとついた肉をスプーンで切り分けようとしたときのことだ。思わず叫んでいた。「や、やわらかい!」
ジューシーな「太陽光線ガイヤーン」
まるで生肉のままのような弾力だった。そして、切り分けた肉を口に入れた。完全に火が通っているのに、肉そして肉とした食感と口中にほとばしる肉汁。下手なガイヤーンによくある乾ききった肉とはまったく真逆だ。
太陽光線でじっくり焼くと、実際には焼いているというよりも蒸している感じになるのだろうか。とにかくやわらかくて、それでいて歯を弾き返すような肉質。閉じ込められた肉汁が堪らない逸品であった。
かつてこんなにもおいしいガイヤーンは食べたことはない。僕の最高の賛辞をシラーさんに贈りたい。
見どころ & 食事どころ
シラーさんの太陽光線ガイヤーン(ガイヤーン・パラン・セーン・アーティット) ไก่ย่างพลังแสงอาทิตย์
場所 219 Moo7, NongSano, Muang Phetchaburi
電話 0-3242-8250
時間 10時~20時(鏡で焼くのは8時~10時ごろ)
料金 太陽光線ガイヤーン1羽200B、半身100B、太陽光線ムーハン(豚の丸焼き):1塊(約100g)35B
※人気があるため、ガイヤーンは1日前に電話で予約するのが望ましい。
行き方
バンコクから国道4号線をひた走り、BTSプロムポン駅周辺から約130km先にある分岐点からペットカセーム・ソイ34に入り、市の柱がある公園前の交差点を右折する。
タイムテーブル
07:00 自宅出発
08:00 アムパワー周辺通過
09:00 やや迷って到着
09:10 焼いている様子を見学
09:30 食事
10:30 バンコクに向け出発
12:30 自宅帰着
評価
ローカル度 ★★★★★
マニアック度 ★★★★★
セルフィー満足度 ★★★★☆
リラックス度 ★★☆☆☆