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事件が起きたのは深夜0時過ぎ。
人通りがまったくない通りではない。むしろ、どちらかというと、常に人の気配のあるエリア。そんな都会のど真ん中に出現した、エアポケットで、タイ人2人組による日本人を狙った強盗事件が発生した。
…………
先日、ニュースクリップで報道されたこのニュースに驚いた方も多くいたことだと思う。
バンコク都心で路上強盗続発、日本人複数が被害 タイ人2人逮捕
http://www.newsclip.be
ニュースクリップ内で出典となっているのがこちら
รวบโจรจี้ชิงทรัพย์ทำร้ายร่างกายชาวญี่ปุ่น รับหาเงินซื้อกัญชา!
(意訳:強盗が日本人を襲う、大麻を買うためのお金目的で)
https://www.matichon.co.th
このニュースが出る前夜、知り合いから「最近、日本人を狙った強盗事件が続発している。友人も被害に遭ったので、ダコの読者にも注意喚起してほしい」と連絡を受けていた。
犯人が捕まった、という一報にほっとしながらも、その方の話を聞きに向かった。
被害に遭ったのは、タイで自営業を営む小柄な日本人男性(仮にAさん)。
Aさんが襲われたそのソイは、飲食店も多く、昼間であれば人通りや車の通りが絶えないにぎやかな通り。時間も真夜中とはいえ、0時を少し回ったところ。ちょうど飲み屋さんから帰る人も多くなりそうな、そんな時間帯だった。
実際には、犯人はバイクに乗った2人連れだったのだが、Aさんが襲われたとき、目の前を歩いていた犯人ひとりに襲われたと錯覚した。
バイクに乗った2人組ではない?
どういうことかと言うと、犯人は用意周到にも、事前にバイクで周辺の様子を伺っており、ちょうどそのとき、そのソイの中に、だれもいないことを確認していた。タクシーから降りたAさんに目を付けた犯人たちのひとりがバイクから降りると、Aさんを追跡し、そして、追い越し、入るであろう店の前で、人を待っている風を装っていたという。
Aさん自身、まさか自分がその男に襲われるとはつゆほども思わず、近くの飲食店で働くスタッフの彼氏が迎えに来てるぐらいの感じで、特に意識もせずそのまま店に入ろうとした。
「もしこのとき、犯人と目を合わせていたら、襲われなかったかもしれない」とAさんは言う。用意周到な犯人なので、顔を見られたら危険を冒してまで犯行に及ばなかったのではないか、ということだ。
しかし、このときAさんは男性と目を合わせることなく、そのまま店に入ろうとした。
それでも、バンコク滞在歴が長いAさんだったので、用心のためボディバッグをタスキ掛けにして自分の胸元に貴重品が来るように持っていた。まさかこの状態の鞄を奪おうとは思わないだろう、と油断していたところもあったそうだ。
そして、事が起こる
後ろからすごい勢いで鞄を引っ張られ、入り口の階段を上ろうとしていたところを引きずり倒された。Aさん自身、必死で抵抗した(今まで出したことがないくらいの大声をあげながら腕を思いっきり振り回した)が、相手の力が強かったためどうしようもなかった。取っ組み合いの際に倒され、地面に頭を打ち、一瞬意識が遠のいた瞬間に逃げられた。
後には、犯人の履いていたサンダルの片方が残っていた。
このときのことを振り返ってAさんは言う。
「もし、このときもっと抵抗していたら、ナイフなんかが出てきてより大きな怪我をしていたかあるいは殺されていたかもしれない。意識を失ったのは不幸中の幸いだったのかも」
その後しばらくして、近くの別の店から客がわいわいと出てきたそうだ。そんなピンポイントともいえるタイミングを狙っての犯行だった。
ニュースにもあるように、この犯人たちは広い範囲で犯行を繰り返していた。Aさんが事情聴取を受けた際、警察からも話を聞いたそうだ。それによると、犯人たちは、アソークからエカマイの細かいソイを隈なく回り、人通りが途絶えるタイミングを狙って標的となる人物を見つけ出し犯行に及んでいた。
以前のバンコクなら「○○通り周辺でこんな犯罪が起こったことがあります」という情報もあって、そこを注意していればよかったところがある。
今回の犯行に関して言うと、アソークからエカマイの広範囲において、ひとりで歩く、鞄を持った、男性(犯人が組み伏せそうと感じた人たち)が狙われた。たとえて言うなら、犯人が大きく網を張った「くもの巣」の中にたまたま入ってしまった不運な人たちが被害者となった。
Aさんが周りの人たちにこの話をしたときに「酔っ払っていたんでしょ」「Aさんの不注意だ」といわれたそうだ。Aさん自身にも落ち度があった、と言われたように感じたという。もちろん、本気でAさんが悪いと思って言ったわけではなく、気の置けない仲間たちからの元気付ける意味合いもあったのだろうけれど。
Aさんが繰り返し言っていたのは「この手の事件は『○○してたら防げる』や『××しなければいいんだ』で済む話でない。だれに対しても起こり得ることだと意識してほしい」ということ。
一連の事件が起こったのは、深夜0時から3時の間。もちろん、そんな時間に出歩かなければいい、といってしまえばそれまでなのだが、バンコクという街に慣れてきた頃、家や行き着けのお店の近くなどの慣れた場所で、どうしても気が緩んでしまうタイミングがあるのも事実。
そんなとき、これはだれに対しても起こりうることだ、と頭の片隅に留めておいてほしい。今回の犯人は捕まったが、悪い人たちすべてがいなくなったわけではないのだから。
最後にAさんはいう。
「どこの国に居ようと、安全といわれる街に居ようと、襲われるときは襲われてしまう。危険はいつも隣合わせにある。けど、それでも私はタイやタイ人たちが大好きだ」
そう、バンコクにも危険はある。でも、だからと言って、イコール、バンコクが危険な街というわけではない。タイ人の仲間や友達、上司、家族がいる。頼れる人たちが周りにいる。そして、みんなよりよい(安全な)生活をしたいと願って生きている。それが、今僕たちが住んでいるバンコクという街なのだ。(編集U)