書き手 戸島国雄(タイ国家警察大佐)×
タワッチャイ・メークプラサースック(タイ国家警察少将)
警察官になっていなければ
36年間警視庁の鑑識課にいた私は、日本の鑑識技術をタイ国家警察へ伝授するためJICAに派遣された。当時55歳だった。
警察士官幹部学校を卒業し、鑑識課に配置されたばかりのタワッチャイ氏は事件事故など現場が好きな、25歳の真面目な青年士官であった。
大きな事件現場では自分が納得するまで現場に臨場し監察を繰り返した。鑑識が間違っていればその事件は解決しない。鑑識の技術は事件現場で覚えてゆくしかない。
殺人、火災、自殺、爆発などの現場で、腐敗臭を鼻で嗅ぎ、死体を目で見て、手で触ることは、机上の勉強と違い一生忘れることはない。15年間、朝から晩まで彼と多種多様な事件現場に出動した。
信用は目に見えるものが裏付けとなるが、信頼はお金では買えない。彼は人を騙したり、人を利用したりする男ではない。常に慎重に考え、人が嫌がる事件現場は無理に人に任せない。手抜きせずに基本を守り最後まで難事件解決を解明に導く仕事ぶりはほかでは見ることがない。
毎朝6時、警察局本部前にあるお寺で、残酷な遺体を取り扱う前に、瞑想し合掌する姿をよく見かけた。警察官になっていなければ名のある立派な名僧になっていたのではなかろうか。
(提供:Canon)
タイ在住の日本人が縁あってこの地で知り得たタイ人の友人知人仕事仲間を自慢するコラムです。
(ダコタイ語版ウェブに翻訳されて転載されます)