書き手 吉田悠希(ショードッグブリーダー)×
キット先生(ショードッグブリーダー)
犬を売らないブリーダー
「ドッグショーに出場しても金が掛かるだけで勝っても賞金は出ないよ。もらえるのは名誉だけ。それでもやるの?」
師匠のキット先生に念を押された。最初は口の悪い変なおじさんと思っていたけれど、実際は何でもはっきり言う熱い親父。僕がこの世界に入って今年で4年目、世界レベルの試合で結果を出せる様になった今でも同じことを言う。
ブリーダーといえば犬を繁殖して売る人というイメージだろう。もちろん僕達も一般のお客様に販売するし育て方の相談にも乗る。ただほかとどこが違うかと言うと、ほとんど売らない、お断りするケースの方が多いのだ。
「売った犬が飼い主のところで幸せじゃないなら売っても意味がない。だからお客さんは選んでいいし、会話を重ねて理解してもらってからでも遅くない」。師匠にこう指導され、めでたく僕もなかなか売らないブリーダーとなった。
「金儲けで犬を売るより、犬種の歴史を語る上でだれもが絶対に口にする人間、そんな人間になった方が人生に意味があるだろ?」。
この師匠の言葉を座右の銘に、今日もタイ人と日本人師弟が二人三脚で世界に挑戦している。
(提供:Canon)
編集注)タイの在来犬種バンゲーオの「雷電(写真中央)」は世界各地で催されるワールドドッグショーで2017年から2018年の間、出場のたびに世界チャンピオンの座を獲得している
タイ在住の日本人が縁あってこの地で知り得たタイ人の友人知人仕事仲間を自慢するコラムです。
(ダコタイ語版ウェブに翻訳されて転載されます)