モツ入り米麺は何を語るのか
バミー・ヤム・ヘーン
453号の当コラムで歴史ある米麺横丁、バーン・クンノン通りの店を紹介した。ほかにも注目すべき店があったので、取り上げたい。
モツなんて日本人は興味ないかもしれないが、心を開いてみてほしい。バーン・クンノンではこの店が最初にモツ入り米麺を販売したといわれているんだ。ここのモツは丁寧に洗ってあるから、生臭さは心配ご無用だ。モツだけでなく挽肉なども入っている。
もう一つの特徴は、タムルンという栄養たっぷりのタイの伝統野菜だ。スープの具にしたり、茹でてナムプリックと食したりすることが多い。シャキシャキして青臭さはなく、米麺に乗せると独特の香りを添えてくれるから、人気なんだ。
この店のモツの興味深いところは、一般的な店は注文が入るまで生の状態で置いておくのに対し、すでに調理済みであること。舟上が店だった時代の名残りだ。
当時は冷蔵保存ができなかったため、ナマ物を置いておくことができなった。そこで舟には加熱調理済みの食材を乗せていたんだ。この店は水上生活時代の生き証人というわけだ。
僕は「バミー・ヤム・ヘーン」(汁なし中華麺)を注文した。サーブされて真っ先に目に入ったのが、丼の中で積み重なった大きなモツだ。下に何があるのかまったく見えない。モツをかき分けると、豚の揚げカスと揚げワンタン、その下にバミーが見えた。食感のギャップが楽しい。特に気に入ったのは、大粒の黒胡椒と蒸した胃袋だ。
この調理法は伝統的で、柔らかくしっとり仕上がっている。レバーや腸も弾力があっておいしい。熱々のスープをすすると、甘みのある豚骨ダシが喉の通りを滑らかにした。
また米麺横丁の気になる1軒の紹介が済んだ。美味なだけでなく、店主が後世に残そうとしている伝統が詰まった一杯だった。
クイティアオ・クルアンナイ・ムー・バイ・タムルン
2代目店主のプラニーさんによると、両親が舟を漕いで運河で行商していたのが始まり。1961年に陸に店を移し、その後も移転を繰り返したが、いつも民事執行局周辺だったという。丼がやや小ぶりだから、一杯で足りなければ豚の血入りガオラオやイェンタフォー、ムーサテなどいろいろ頼んでみよう。どれも陸に店を移してから増やしたメニューだ。料理ならタムルン米麺(30B)が一番だが、バナナの葉で包んだ自家製スイーツ(1個5B)もおすすめだ。