男と女の学際研究

タイ人が日本人を演じる際の違和感 vol.023

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男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~

4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。

 

今回の著者:文化人類学 片山 隆裕

 

国民的スターが演じる日本人

タイ映画『クーカム』(運命の相手)をご存知の方は多いことと思います。

第二次世界大戦下のタイ、タイ女性アンスマリンには結婚を約束した恋人ワナスがいました。しかし彼はイギリスに留学し戦争のため帰国できなくなります。

アンスマリンは父親の勧めで、タイに進駐してきた日本軍将校コボリと政略結婚をさせられてしまいます。最初はコボリに反発していたアンスマリンでしたが、次第に彼の人柄に惹かれていく……というタイ女性と日本男性のラブストーリーです。

『クーカム』はこれまでタイで何度も放映されてきましたが、国民的スターのトンチャイやナデートらが演じるコボリは、タイ女性の日本男性観に大きな影響を与えてきました。

 

タイ人が日本人を演じる際に生じる違和感の原因は?

ところで、作品の面白さとは別に、タイ人男優が演じる日本軍兵士たちの動きがなんとなく滑稽に見えるところに興味を引かれます。同じような感想をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。

フランスの社会学者M.モース(1872~1950)は、身体そのものの使い方は文化によって異なり、歴史によって変化することを指摘し、歩き方、泳ぎ方、休憩のポーズなどを例に議論しています。

たとえば、イギリス兵とフランス兵は異なる歩調で行進しますが、これは生まれつき体の作りが違うためというよりも、各社会でよしとされる行進の仕方を各自が模倣しながら後天的に習得し、それが身体に染みついてしまったためであるというのです。
モースはこうした社会的に習得され、癖になった身体技法の型をハビトゥスと呼んでいます。

『クーカム』の中で、タイ人女優が演じるタイ女性の姿が自然に映るのに対して、タイ人男優が演じる日本兵の所作になんとなく滑稽さを覚えるのは、日本とタイの文化や歴史が規定してきたそれぞれのハビトゥスの差だと考えられるのではないでしょうか。

 

参考文献:M・モース「身体技法」『社会学と人類学Ⅱ』(有地亨・山口俊夫訳) 弘文堂 1988年

 

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