男と女の学際研究

女性の自立と男の婿入り婚 vol.004

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男と女の学際研究 ~現役学者が微笑みの国を考察!~

4人の現役研究者が「日本男とタイ女」をテーマに、いろいろな角度から考察する連載コラムです。

 

今回の著者:文化人類学 片山 隆裕

 

女性の自立性が高いタイ農村

 

1960年代~1970年代におけるタイの農村共同体研究において、伝統的な農村社会では男女の役割は相互補完的で、女性が農作業に従事し、機会があれば小商いを行うなど、女性の自立性が高いことが指摘されてきました。

家族・親族関係に目を転じても、タイでは、女性の地位・役割の相対的な重要性を見てとることができます。たとえば、結婚後、老親と同居するのは一般に末娘とされており、均分相続でありながら末娘への不動産などの相続の傾斜がみられますし、理念としては、男性が女性の家に婿入りする「妻方居住婚」が一般的です。

また、祖先儀礼においても母系ラインが強調されるなど、儒教イデオロギーを背景とした中国、韓国など東アジアの家族・親族のありかたとは、かなり異なる特徴が見出せるようです。

チェンマイ県でフィールドワークを行った米国の文化人類学者J.ポッターは、「妻方居住婚は、母から娘へと継承される祖霊ピープーヤー(おじいさん、おばあさんの精霊)の祭祀を重要な社会的機能とする北タイの親族集団の継承と関わっている。女性中心の親族構造は婚入してきた男性の立場を弱くすることがあり、特に男性が村外から婚入してきた場合、その立場はさらに悪くなる」と述べています(Potter 1977)。

 

日本は「嫁入り」、タイは「婿入り?」の感覚

「カカア天下」という言葉がある日本ですが、まだまだ社会や家族の中では男性の立場が強く、結婚に際しても女性が男性のもとに「嫁ぐ」という感覚のほうがまさっており、結婚後も夫の姓を名乗る割合が95%に達しています。

家族・親族・結婚をめぐる日タイの根本的な違いは、グローバルな流れの中で、国境を越えてタイ人女性のもとに「婿入り?」する日本人男性たちを、もしかしたら戸惑わせることになっているのかもしれません。

 

【参考文献】Hanks & Hanks 1963  Thailand: Equality between the Sexes, (in)B.E. Ward(ed.) Women in the New Asia, UNESCO, 速水洋子 2007「他者化するまなざしの交錯の中でータイ」(宇田川妙子・中谷文美編)ほか

 

DrKatayamaProfile かたやま・たかひろ

九州大学大学院博士後期課程退学。ニューヨーク州立大学大学院留学。タイ国立チェンマイ大学、チュラーロンコーン大学客員教授などを経て、現在、西南学院大学国際文化学部長・教授。専門は文化人類学、東南アジア研究。

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