持ち物は、小さな冒険心ひとつと、そのトリップを楽しむコツ。タイ人文化や地元の生活、おいしいご飯があるバンコク近郊のローカルなスポットへ行けば、バンコクの日常からほんのひとときエスケープ。タイ人が「ね、今度の週末、行かない?」と誘ってくれるレジャーコースをお届けします
おすすめ係 編集部シニアリサーチャー、テンモー
旅して書く係 さやか。自由と孤独を愛するB型てんびん座
厄祓いで有名な中国寺の支院 ワット・レン・ヌーイ・イー2
「新年だタンブン(=徳積み)だ!」というテンモー隊員の鶴の一声で、今回はお寺行き。1980年生まれのわたし、タイ人の友達からの賀正メールの追伸で「申年(タイ語ではピー・ウォーク)生まれは今年厄年だから厄祓いするように。行くなら中華街のワット・モンコーンがいいよ」と言われていたのをハッと思いだした。厄祓いはここと相場が決まっているらしい。
テンモーから告げられた行き先は、その支院、ワット・レン・ヌーイ・イー2。ノンタブリー県に2年前に建立した新しいお寺だ。立ち込める煙で前が見えない本家の比ではないくらい広く、思う存分タンブンできるらしい。これぞ渡りに船、年の厄と心の垢を落としに行こうぞ。
ノンタブリーまで8B
まずはロータス・ピンクラオまでタクシーで乗り付けて、目の前の停留所でバスを待つ。戦勝記念塔経由だと迂回するルートを取るので、これが一番の近道とのこと。127番はエアコンなしだけど寺の前まで行くよ、177番はエアコンついてるけど停留所から500mぐらい歩きます、どっちがいい? と訊かれて迷っているうちに127番が来たので乗り込む。車掌には「ワット・レン・ヌーイ・イー2まで」もしくは「終点まで」。運賃は8B。10 B以下で県越えできるなんて。
冷静に暮らすためには扇風機を……
45分後、テンモーと二人、天安門を模したという本格中華の寺の前に降り立つ。大乗仏教を信じる仏教徒のためのお寺としてはタイ有数の規模というだけあって確かに広い。入口付近でお香と花のセットを20Bで購入。
お香は9本入りで、奥へと連なる3つのお寺に3本ずつ供えるんだそう。幸福を呼ぶろうそく(100B)など、オプションのお祈りグッズもいろいろ。お参りの手引きのような紙に目を通すと、病気を治したい人は薬を、食うに困らないためには食事を、人生を明るくするには蝋燭をお寺に寄進しましょうとあって、あぁその分りやすさよ。仕事が欲しい人は寺に床を張れ。金持ちになりたい人は金箔を仏像に。もう頓智の世界だ。
タイ人が答えに窮するのを見てみたくて「じゃあ、きれいになりたい人は?」と聞いてみると、「蓮の花とかきれいなものをお供えしたり、お寺の掃除をしたりすればいい」と涼しい顔のテンモー。うーむ一本取られた。
涼しいといえば、心の冷静沈着さを得るためには寺にエアコンか扇風機を進呈しろと書かれていたのには笑った。
いざ厄祓い
タイで今年厄年にあたるのは、猿・虎・巳・猪年生まれの人。本堂の下に設けられた特設会場にて厄祓いグッズを購入。料金体系は「悪いことを祓う100B、良いことを招き入れる200B、両方セット300B」という明朗会計。良いことは自分で生み出したいが、不可避な災難からは免れたいと、基本の100Bコースを求めて渡されたのは冊子状のお札。中に名前や生年月日などを記入し、上のお寺に持っていってお願い事をし、見よう見まねで悪いことを線香の煙に乗せて送り出す動きを12回繰り返して完了。
古さが生きている界隈
お寺からタクシーで30分、バーン・シー・ムアン船着き場から渡し船で、エキスプレスボートの始発点である向かいのターナーム・ノン船着き場へ。あ、と指さした先を見て「そう、このあたりはバンコク近郊で唯一自転車タクシーが現役で走っているところなんです」とテンモー。船着き場から伸びる道を直進10分左、牛肉クイティアオが人気のお店「ガオラオ・ムアン・ノン」にて1杯25Bの小ぶりなクイティアオを2杯。船着き場近く、お菓子と焼き物が名産のクレット島について知れるノンタブリー博物館を見学し、季節外れのスコールに追い立てられるようにして船に乗り込み、サパーンタクシン駅まで丁度1時間の帰途13B。
今年一年安泰に過ごせますように。
ちなみに今回行ったお寺、ワット・レン・ヌーイ・イー2の正式名称は、ワット・バローム・ラーチャー・ガーン・チャナー・ピセーク・アヌソーンというありがたく長ーい名前なのでした。