上流へ向かうときは、これからの期待感を。下流へはこれまでの反省を。じっと物思いにふけるのもよし。変わりゆく空の色に合わせて違ったカクテルをオーダーするもよし。今回はチャオプラヤー川を悠々とクルーズするトリップです。何?飲み放題ですって?
旅して書く係 スクムビットにあるお店の番人。甘いもの断ち解禁まであと数日。
13歳から75歳までをご案内
お盆休みを利用して親戚がバンコクにやってきました。お泊りは豪勢にペニンシュラで総勢13歳から75歳までの7人! しかしこれだけ年齢差と頭数があると、案内したい「ちょっとローカル」には悩んでしまいます。各自の興味や体力面を考えると……みんなでいっしに楽しむなら……やっぱりチャオプラヤー・リバークルーズでしょう!
まだ明るいうちから出発
ペニンシュラホテルの「サンダウンクルーズ」への予約は当日の朝でも大丈夫でした。ただしクルーズがあるのは金、土、日のみですからご注意を。18時ちょうどにホテルから続く船着場に出て、のんびり待つこと約5分。乗船の合図があり、いよいよクルージングです。しかし、サンダウンクルーズというのにまだ外は明るく、日差しも強い。特にこの日は蒸し暑く、吹く風も生温かかったのがちょっと残念でしたし長袖のTシャツだったのも計算違いでした。
船は渡し舟のような小さな木造りですが、つやつやに磨かれていて快適です。舵のある前方に小さなテーブルが4つ。船の中央にドリンクを作るカウンターがあり、後方にひとつあるテーブルを囲むようにベンチがあります。私たち以外の乗客は、ひとり旅風の女性や外国人カップルしかいなかったので、友人宅のホームパーティーにでも招かれたようにアットホームな雰囲気でした。
カクテルも飲み放題!
クルーズの目玉は夕暮れの川沿いの風景であるのは言うまでもありませんが、カクテルを含むドリンク類が飲み放題であることも大きな魅力です。カナッペなどのちょっとしたおつまみもついているので食事前のこの時間帯にはぴったりのセッティングです。団体の私たちは後方のベンチに案内されて早速ドリンクメニューを手渡されました。
カクテルとともに空の色の変化を
ほろ酔い気分で風に吹かれているとワットアルンが近づいてきます。橋の下をくぐり、王宮まで来たところで折り返し。王宮のライトアップを期待していたのに、まだ明るいのにはがっかりしました。「あっ、虹!」。だれかが叫びました。
街の中を忙しく行き来していたらきっと見落としていたに違いありません。早く暗くならないかと明るい空をうらめしく思っていた気持ちも吹き飛びました。
やがてその虹も見えなくなり、いつのまにか夕焼け空が広がります。再びワットアルンが近づいて来ました。今度はライトアップされて堂々と輝いています。遠目に見た王宮とは違ってかなり近くで見られるので迫力満点です。シャッターを押しますが、動く船からの撮影はとても難しい。それを察してくれたのか、つかの間、スタッフが船を止めてくれました。遠のいていくワットアルンをいつまでも眺めているうちに、どんどん日が落ちてゆきます。
前方を見ると、空は紫色から紺色に変わり、川辺にホテル群の明かりがきらきらしています。ペニンシュラホテルに着くと、すっかり夜の景色に変わっていました。こうやって1時間、時の流れと川の流れに身をまかせ、ゆらりゆらり変わっていく空の色をカクテル片手に眺めていられたなんて、なんたる幸せ。こんな幸せなひと時がいつでもすぐに手の届くところにあることに安堵し、バンコクに住んでいることに感謝してしまいます。
今度のお休みは、スーツケースなしで、異国情緒を味わえるこんな旅に出かけてみるのも悪くないですよ。