心遊べ、と囁いている?

その夜、自分史上のなかで、ずいぶん気持ちのおしゃれをした。
大都市の真ん中に聳え立つ5ツ星ホテル「インターコンチネンタル・バンコク」、大改装を終えたばかりの館内で会食をし、宿泊することになっていた。ドレスコードは「夜会服」。なにそれ? 手持ちのワードローブに選択の余地はない、結婚式用の一張羅をひっぱり出し、会場に向かった午後7時。
シックな茶系とゴールドで知的な書斎をイメージさせる吹き抜けのロビーで、気分は高揚し、銀色のピンヒールのつま先から背中を伸ばした。連れはいない、ひとりだ。
イタリア料理の「グロッシー・トラットリア」へ行くと、ゲストの装いはモノトーンが多く、同じテーブルを囲むのは4カ国のビジネスマン。洗練された雰囲気に躊躇した。アタクシ派手?
隣の女性が「素敵な靴ね」と微笑む。大きく息を吸って「ありがとう」。そしてふたたび背筋を伸ばした。
野生味あふれる肉料理の頃には、くっと胸を張るたび気分がよくなる。多国籍ゲストと一緒にいながらも、ひとり遊びを楽しんでいる心。葉巻とウィスキーの宝庫、ヒュミドールへ誘われ、肩をぐっと引きキャットウォーク。女全開の服でシングルモルトを3杯飲み、周りの欧米人が吸う葉巻の香りに目を細めたりした。
自分に問う、「あなた、だれ?」。なりきり具合がおかしい。
ゲストのひとりが言った「ピンクのシャツのカオマンガイを食べに行こう」。今日は断るべきだ。都会のホテル遊びをきっちり楽しもう。ということでニッコリ「おやすみなさい」。
2406号室のグランドデラックスルーム、8種類の枕で寝心地が選べるベッドでモンロー気分。あんなことこんなことしていたら、またシングルモルトが飲みたくなった。
INTERCONTINENTAL BANGKOK
住所 973 Ploenchit Rd.
電話 0-2656-0444
HP www.intercontinental.com
料金 Grand Deluxe : 7000B(朝食なし)、Club Intercontinental:9200B(朝食付)、 エキストラベットは1500B
※いずれも税サ別。








