タイでは今週も様々なニュースが駆け巡りました。そのなかでも注目のニュースを、ダコの姉妹紙である「newsclip」編集部が解説します。
今回のテーマは、拡大するタイでの「政治集会」について。
newsclip.be発、今週の注目ニュースは?
8月4日 「6日国会前、7日民主記念塔 バンコクで政治集会 日本大使館が注意」
8月7日 「7~15日にタイ各地で政治集会 日本大使館が注意」
※参考記事
7月25日 「25~31日にタイ各地で反政府集会 日本大使館が注意」
7月29日 「反政府派、政府支持派がタイ各地で集会 日本大使館が注意」
政治集会に関する話題が続いています。newsclip.beでは今週、8月4日付け「6日国会前、7日民主記念塔 バンコクで政治集会 日本大使館が注意」、7日付け「7~15日にタイ各地で政治集会 日本大使館が注意」という記事を掲載。先週も7月25日付け「25~31日にタイ各地で反政府集会 日本大使館が注意」、29日付け「反政府派、政府支持派がタイ各地で集会 日本大使館が注意」という記事がありました。
タイトルのとおり、在タイ日本国大使館からの注意喚起を元とした情報です。newsclip.beおよび当連載では形態に応じて「政治集会」、「反政府集会」、「抗議集会」、「反政府デモ」などと呼称を変化させていますが、今回は情報源に合わせて政治集会に統一します。
政治集会は7月に入って急拡大しています。まずは集会場所です。これまで民主記念塔といったバンコク都内の特定地区にとどまっていたのが複数拠点となり、さらには中部、北部、東北部、南部と全国規模に広がりました。
過去の政治集会や暴動はほとんどがバンコクで起きています。地方での騒ぎはいたって小規模なもので、例外は2009年に東部チョンブリ県のビーチリゾートであるパタヤ市で起きた、反政府グループによる東南アジア諸国連合(ASEAN) 首脳会議乱入事件ぐらいです。
学生たちの背後には?
一方、先の「急拡大」という表現とは矛盾しますが、それぞれの集会は数百人にとどまるなど、人数的に決して多くはありません。2009年および2010年に起きた赤シャツ暴動の規模にはとうてい及ばず、今年の一連の政治集会が過去のような大きな暴動に発展する心配は現時点ではないといって良いでしょう。
一部の日本語メディアがこのタイミングでさっそく、赤シャツ暴動で死亡したタイ人の記事を伝えていましたが、これはむしろ10年の節目だった今年5月に取り上げるべき内容でした。
ただ、2006年のクーデターにつながった2005年からの政治集会も、当初は都内ルムピニー公園で100人を集めるのがせいぜいの規模でした。推移を見守る必要はあります。
全てを見て回ったわけではないので断言はできませんが、今回の政治集会の同時多発は主催者の多くが学生であることが理由だと思われます。仲間の活動に影響されて自分も、と立ち上がった学生もいるでしょうし、それぞれが連携を図っているでしょう。
しかし今のところ、過去の騒ぎで資金提供を続けてきたとされるタクシン元首相のような存在は見当たらないようです。「学生=タナートン」という図式を口にするタイの人たちがいますが、組織として動いているという見方はされていません。そのような理由で、1つひとつの集会が小規模にとどまっているものと思われます。
タナートン・ジュンルンルアンキット氏は、昨年の選挙で野党第2党となった当時の新未来党の党首です。今年に入って政党法違反で10年間の参政権停止を受けて党も解党に追い込まれましたが、民主化推進を掲げるリベラル系として常に若者の支持を得ています。
タイは新型コロナウイルスの国内感染が2カ月以上ありませんが、コロナ禍を理由とした非常事態宣言は8月末まで延長されています。「(非常事態宣言を)反政府派の政治活動の抑え込みの手段として利用している」といった政府批判の続出です。そして、政治集会が民主主義の象徴としてもてはやされるよりもむしろ、「学生が騒ぎを続ければそれだけ非常事態宣言も続く」と、うんざり感が広まっているのが事実です。