都会の速いリズムに少々疲れ気味、バンコクから2時間弱のアーントーンに人間本来あるべきリズムがそこにあった。
田園風景に水牛眺め、次はあなたの鼓動が、太鼓と同調し、遊びも仕事ももっと活性化しますように。
【旅して書く係】 ペロンヤス クロ師匠より厳しい特訓の毎日
わいわい出発。辿り着けるか!?
「秋になると、故郷の祭りが恋しくなるなぁ」。
先祖代々受け継がれる太鼓のリズムに、笛の音色……。
夜中に仲間が集まっては、それぞれの故郷を想い、口ずさみ、気づけば勝手にひざ打ちしてしまう。
ぼそっと友達のひとりが「なぁアーントーン県の太鼓村、知ってる?」。
みんな、「……?」。明日は休日。「よし、いこか!」
とノリで道も知らずに行ってきましたアーントーン県の太鼓村。
今回の旅仲間5人が持つ情報は、太鼓村があるアーントーン県はアユタヤー県の隣、それだけ。
地図もなければ、スマートフォンなどだれひとり持っていない。たどり着くかわからない上に、5人も集まれば遅刻必須は免れない。
朝10時過ぎ、ダラダラ車に乗り込み、とりあえず国道1号線をアユタヤー方面へ走らせながら、田園風景の側道に必ず現れるサーイマイ屋(タイの綿菓子)で道草。
デザートから始まる朝食を終え、道路標識を頼りにゆっくりのんびりアーントーン市内に何とかたどり着くは昼過ぎ。
そして今度は遅い昼食。目的の太鼓村はいつどこに現れるのか!?
忘れずに食べたい太鼓前のタイ料理
まぁ腹が減っては太鼓は叩けぬとばかりに入ったのは、アーントーン市内の川沿いにあるタイレストラン「レック・バーン・ロー」。門をくぐると子どもがブランコのベンチでユ~ラユラ。
あぁゆるい。休日らしくなってきた。
大好物のナムプリック・ロンルア(豚のミンチが入ったナムプリック)に玉葱とニンニクのソースが絶妙な魚の黒胡椒炒め、ソムタム、コームーヤーン。当たりや、抜群にうまい。
大満足に浸って、目的を忘れてしまう前に脱出し、バイタクのあんちゃんから情報収集。
10km圏内、到着まであとわずかだ。
刻む雨の向こうに 村、出現!
言われたとおり道なりに進み、OTOPと書かれた看板を見つけるが、
その向こうには何の変哲もない古い民家が並ぶだけ。
その上雲行きも怪しく、やってきたスコール。
雨の中、しょんぼり眼で眺める民家の軒先に並ぶ太鼓。
「あっ、ここやん!」、みんなの笑い声と共に、わかりやすいタイミングで雨もしっかり止んでくれる。
各民家の軒先にずらりと並ぶ派手なタイの長太鼓に始まり大太鼓、小太鼓、コンガにボンゴ、ジャンベ、サイズも小さな植木鉢ぐらいのものから、大人がスッポリ入ってしまうものまで様々。
世界一大きく長いといわれる太鼓も涅槃仏のごとく、この村の守護神として横たわっているのだ。
気さくな村、とまらない演奏会
もちろん太鼓だけでなく、木琴にドラ、チンなどありとあらゆる打楽器が各民家に並ぶ。
店内というべきか、その軒先にお邪魔しても商売っ気などほとんど皆無。
まあゆっくりしていってとばかりに好きなだけ試し打ちもさせてくれ、一息ついたところで、どうぞとコーラまで出してくれる。
振り返ったその裏庭では、この道50年は下らない年季の入ったおじいさんが慣れた手つきで大木を切り、磨き、息子が器用に皮を張っては、嫁が紐を締めていく。
その横で遠くを眺めてはあくびをするおばあちゃんも立派な指揮者だ。
その尊い命を繋ぐリズムに同調してか、僕らの演奏会は店の軒先で日が暮れるまで続いたことは言うまでもない。
もちろん買わせていただいた4つの太鼓が、帰りの車内でもしっかりアンコールに応える。
そして運転する友達が唸りを上げた。「あー、うるさい!」
太鼓村(The Drum Making Village)
住所 Moo 6, 7 Eakaraj Pamoke Angthong 14130
営業 24時間
料金 なし
行き方
ミニバス:戦勝記念塔、モーチットからアーントーン・パモーク行きに乗り、パモーク市場で下車。
市場からソンテウ20B、バイタク20~30Bでレストラン「レック・バーン・ロー」へ→「レック・バーン・ロー」からバイタクで約120Bで太鼓村へ