今年で7年目を迎える、国際舞台芸術祭「東京芸術祭2022」では、プログラムの1つとして、タイを代表する歴史学者チャーンウィット・カセートシリ氏(元・タマサート大学学長)によるレクチャーパフォーマンス『An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私』を上映します。
チャーンウィット氏のパフォーマンスは、1964年に当時の皇太⼦(のちに平成の明仁天皇)夫妻がタイを公式訪問した際に、チャーンウィットが記念に賜った酒盃を起点とし、⾃⾝の個⼈史をたどりながら、⽇本軍のタイ駐留、ベトナム戦争、1970年代のタイの学⽣暴動など、世界的な社会の変容を辿っていく内容です。
モノや記憶にまつわる個⼈的かつミクロな視点から、タイと⽇本の歩みを重ね合わせ、両国の歴史を柔らかに解きほぐしていきます。⽇本とタイ、2つの国を跨いで激動の半世紀を⾒つめてきた⼈⽣経験豊かな歴史学者による、これからも変化していく未来の時代へ向けた平和への祈りが作品の根底に流れています。
このレクチャーパフォーマンスは、2020年に国際交流基⾦アジアセンター主催“The Breathing of Maps”(「呼吸する地図たち」)に向けて製作され、1回だけ上演されました。その後、2021年のコロナ禍におけるBIPAM(バンコク国際舞台芸術ミーティング)にてオンラインで限定配信され、今回、初の海外公演として⽇本で上演されます。
プロフィール
●構成・出演: チャーンウィット・カセートシリ/ Charnvit Kasetsiri
タマサート⼤学歴史学部教授、歴史学者、タイ研究者として多くの功績を残す。1963年にタマサート⼤学で外交学の学⼠号を優等で取得した後、ロックフェラー奨学⾦を得て1967年にロサンゼルスのオクシデンタル⼤学で外交と世界情勢の修⼠号を、1972年にコーネル⼤学で東南アジア史の博⼠号を取得。1973年から2001年までタマサート⼤学歴史学講師を務め、2000年に東南アジア研究プログラムを創設、1995年から1996年にはタマサート⼤学学⻑を務める。近年は、戦争と平和、ASEAN諸国、特にタイとカンボジアの関係をテーマに研究を⾏う。Pavin Chachavalpongpun(京都)、Pou Sothirak(プノンペン)と共に「Preah Vihear; A Guide to the Thai-Cambodian Conflict and Its Solutions」(2013年)の共著者でもある。また共同執筆したタイの社会科の教科書は⽇本語にも翻訳されている(世界の教科書シリーズ6『タイの歴史:タイ⾼校社会科教科書』中央⼤学政策⽂化総合研究所=監修、柿崎千代=訳、明⽯書店、2002)。2012年に福岡アジア⽂化賞、2014年に⽶国アジア研究協会よりアジア研究への特別貢献賞を受賞。
●演出:ティーラワット・ムンウィライ(カゲ)/Teerawat ‘Ka-ge’ Mulvilai
B-Floor Theatre共同創設者・共同芸術監督。演出家・パフォーマー。タマサート⼤学美術・応⽤芸術学部でデバイズド・シアター(Devised Theatre)の講師を務める。タイの現代芸術⽂化省から演劇の優れた功績に対して贈られたSilpathorn Award(2018)など、受賞歴多数。造形芸術と舞台芸術を融合させ、社会と政治における暴⼒や不公平さなど⼈々の⽣活に影響を与える構造の問題を扱いながら批評的な作品を創作している。⽇本においては、⼩池博史、平⽥オリザ、岡⽥利規などの国際的な演出家と共演。近年の⽇本での出演作品に『プラータナー:憑依のポートレート』(2019)がある。
●演出: ノンタワット・ナムベンジャポン / Nontawat Numbenchapol
映画監督。社会派ドキュメンタリー作品を数々発表し、国際的に⾼く評価されている。初のドキュメンタリー映画『BOUNDARY(邦題:空低く ⼤地⾼し)』(2013)は、ベルリン国際映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(IDFA)、⼭形国際ドキュメンタリー映画祭など、多くの映画祭で上映。2作⽬となる『BY THE RIVER』(2013)は、ロカルノ国際映画祭でタイ映画として初めてスペシャルメンション賞を受賞。『#BKKY』(2016)は釜⼭国際映画祭でプレミア上映、ドイツ・ハンブルグのLesbisch Schwule Filmtageより最優秀⻑編映画賞を受賞。
『An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私』
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
日時:2022年10⽉28⽇(⾦)18:00
10⽉29⽇(⼟)16:00
10⽉30⽇(⽇)15:00
※全3ステージ、上演時間:50分(予定)
※各回終了後に約30分のQAセッションあり
上演⾔語:タイ語 (⽇本語・英語字幕付き)
チケット料⾦:⼀般 2,500円 他
後援:国際交流基⾦
WEB:https://tokyo-festival.jp/2022/program/sake-cup
MAP