
「Stir Fried Acacia with Salted Eggs & White Prawns(250B)」は、独特の香りを放つチャオームの葉とエビ、カイケムを一緒に炒めたご飯が進むひと皿。しっかりと混ぜてから召し上がれ
初めて食べる料理の印象は、初めて食べたお店やシチュエーション、コンディションによってほぼ決まるもの。なかでも、その味をストレートに感じるお店の影響は大きいと言えるでしょう。初対面の印象が悪かったばかりにその料理全体が嫌いになったり、敬遠せざるを得なくなる人もいます。タイ料理のなかでも“ユニーク”と言われる南部料理。皆さんは、どこから始めますか?
タイ南部は3つの食文化の融合が面白い
マレー半島に属するタイ南部は、イスラム教を信仰するムスリムが大部分。豚肉は食べず、街なかには寺院の代わりにモスクが点在し、女性はヒジャブを被るなど同じタイ国内にありながら、食をはじめとした独自の文化を形成しています。
それでは南部料理と聞くと、どんなイメージが浮かびますか? 「辛すぎる」「味が濃い」「手を出すのが怖い」といった消極的な声を聞くことも少なくありませんが、そんな先入観や偏見を壊してくれるのが「Yoong Khao Hom(ユーン・カオ・ホム)」です。本店は、南部・サムイ島にある創業24年の人気レストラン。2017年にタイ進出を果たし、4年連続でタイ版ミシュランのプレートを獲得しています。そんな同店の統括シェフに今年3月、就任したのがオームさん。ミシュラン1つ星獲得のモダンタイレストラン「Saawaan」のオープニングからメインシェフを務めた彼女が加わり、さらなる進化を遂げています。

Executive Chef スジラー・ポンモーン(オームさん)
オームさんへのインタビュー記事はこちら
「タイ南部はタイ、マレーシア(イスラム教)、中国と3つの文化が融合された面白い地域です。食文化の面から見ると、例えばゲーンタイプラーやゲーンソムといったタイ料理がありながら、カオモックガイやゴーレなどマレー文化の影響を受けたもの、福建ヌードルなど中国文化の影響を受けたものが混在しています。お互いの文化を尊重しながら発展してきた南部料理の魅力を、当店を通して伝えていきたいです」とオームさんはその想いを口にします。そう強く語る理由の一つには、南部料理が海外の人たちはもちろん、タイの人たちにも広く浸透していない現状がありました。
規定の枠に収まらない発想力。
「食べやすさ」をテーマに多くの人へ
こうした偏見や馴染みの薄さを払拭するために、同店が掲げるのは「食べやすさ」。ガピ(小エビの味噌ペースト)やクンシアップ(小エビの燻製)といった現地の調味料や、サトー豆、バイリアンといった現地の食材をベースに使いながらも、強調しすぎて敬遠されない絶妙なバランスを見極めます。

タイ南部のカレーと言えばイエローカレー。カニが入った同店の「Southern Fresh Crab Curry with Beetle Leaves(850B)」はマイルドな口当たりが食べやすく、クセになる辛さが後からしっかりとやって来ます。ご飯も頼めますが、このクリーミーなカレーはカノムジーン(タイ風素麺)と食べるのがおすすめ
オームさんが今回、DACO読者に向けておすすめしてくれたのが上記の写真を含めた全7品。太めの卵麺が特徴であり、中国福建省の影響を色濃く受けたプーケット発祥の炒め麺は、オイスターソースをベースに味付けされた日本人にとっても親しみやすい料理の一つ。美味しいと評判を聞きつければ、南部・ヤラー県で製造されるモチモチの麺を現地から仕入れるなど、シンプルな料理の中にもオームさんのこだわりを感じます。

プーケット発祥の炒め麺にクラビで採れた上質なシーフードを使った「Stir Fried Hokken Noodle with Seafood, Pork and Egg(180B)」。サクサク食感のクリスピー・ポークがいいアクセントに
南部発祥の甘辛いカレーソース「ゴーレ」を使った豚肉のレッドカレー仕立ては、6時間じっくりと煮込まれた骨つき豚バラ肉がほろりと崩れる柔らかさ。カレーの風味を漂わせ、食欲が刺激されます。通常、南部では宗教上の理由もあり鶏肉が使われますが、「他で見たことがないから」と豚肉をチョイスしたのだとか。

南部発祥の甘辛いカレーソース「ゴーレ」を使った豚肉のレッドカレー仕立て「Charcoaled Pork Ribs with Southern Red Curry Paste(580B)」。4~5人でシェアするのがおすすめ
同店は7月に、クリスタル・デザイン・センター(CDC)内に3つ目となる新店舗をオープンしました。他の2店舗と異なるタイ・チャイニーズをテーマにするなど、新たな試みを取り入れています。既存の枠に縛られず、さまざまな文化の壁を飛び越えていくオームさん。その手から生み出される料理はきっと、これからも自由にその世界を広げていくのでしょう。
Yoong Khao Hom
場所:2F, I’m Park, 353 Chula Soi 9 Charoen Muang Rd.
(BTSサイアム駅から車で5分)
電話:063-465-6565(英語可)
毎日10:00~22:00(L.O. 21:30)
WEB:www.yoongkhaohom.com
Facebook:Yoongkhaohom
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