ダコを卒業した先輩編集者から本の嫁ぎ先が見つからないからいかが?
という申し出があり、嬉々と本棚を譲り受けました。
その中に入っていた1冊に近藤紘一さん著の「バンコクの妻と娘」がありました。
著者の近藤さんは、サンケイ新聞の特派員としてベトナムに派遣され、
サイゴン陥落を報道。その後は、新聞記者としてバンコクに駐在していました。
この本は、近藤さんが再婚相手であるベトナム人女性ナウさんと、
その娘のユンさんとのバンコクでの暮らしを綴ったものです。
娘のユンさんは、ベトナムで生まれその後、近藤さんたちとともに日本に住みながら
フランス語学校への進学を経て、バンコクで再び一緒に暮らすことになり、フランス学校へ。
ベトナム人として生まれながら、母国語と日本語、フランス語を話しタイで暮らす。
その苦労は、体験せずとも想像に難くありません。
本の中で、ユンさんの将来を心配した東京のフランス学校
の校長先生からの言葉が胸にささりました。
「人間は一国の文化を理解したときに、はじめて他国の文化を理解し、
同時にこの世を理解できるようになる」
タイに暮らし、タイの言葉や文化を吸収したいと望んでいる私は、
日本のことを、日本人であるということを本当に理解しているのだろうか
、異国で暮らすことの意味を深く考えさせられた1冊でした。
近藤さんの優しいまなざしで描かれた、バンコクの日々は、
書かれてから30年以上が経つ今も色あせていませんでした。
まだ、読まれたことのない人は、ぜひ手に取ってみてください。
次の週末は、本を片手に近藤さんが住まれていたという
「火焰樹の花燃える路地」ソイ・トンソンに散歩に出かけようと思っています。
(Y)








