新型コロナウィルスの影響を受け、バンコクでは多くの商業施設が営業停止。学校も休校となり、4月2日からは官民すべての公園が閉鎖中です。外に出たくても出られない状況が続き、運動不足が気がなる人も多いのではないでしょうか。
そんななか、改めて見直したいのが食生活です。日々の食をないがしろにすると、肥満はもちろん、様々な不調を引き起こす可能性もあります。
今こそ知っておくべき食生活のポイントは? バンコクでレストラン「SALADee(サラッディー)」を営む青澤直子さんに聞きました。「野菜ソムリエ」と「アスリートフードマイスター」の資格を持ち、「食材の知識」から「食による体作り」、そして「調理方法」にまで精通する人物です。
不幸中の幸い…ではありますが、食料品を扱う店舗の営業は認められ、またフードデリバリーを利用することも可能。しっかりと知識を持った上で利用すれば、健康を維持することもできるのでは?
青澤直子/野菜ソムリエコミュニティBangkok代表。健幸料理の店「SALADee」を経営。著書に『南国(タイ)の野菜たち』がある。【保有資格】野菜ソムリエプロ、アスリートフードマイスター2級、ベジフルビューティーセルフアドバイザー
運動をしにくい今、免疫力を高める鍵は「食」
ー 今、多くの人が外出自粛の生活を送っています。このような状況では、どのような食生活を心がけるべきでしょうか。
青澤 世間では〝コロナ太り〟なんて言われていますが、太る理屈は明解で、消費カロリーと摂取カロリーのバランスによります。まずは毎日、朝と寝る前にこまめに体重を測って、現在の食事が太る傾向にあるのかどうかチェックしましょう。
カロリーオーバーが気になる場合は、 朝か夕方のどちらかを「メイン」と決めて、あとの食事は軽くする のがいいですね。
毎食でバランスよく栄養素を取らなければ、と考える方もいらっしゃいます。もちろん具だくさんな方がいいけれど、このような状況のなかではとりあえず 「食事を考える負担」も減らした方がいい 。だから、軽く済ませる食事は1品でも十分なんですよ。パスタだけとか、サンドイッチだけとか、ラーメン、チャーハンでもいい。1食は手を抜くと決めたっていいと思うんです。
ー 外出自粛の生活のなかで、特に取るべき栄養素はありますか?
青澤 コロナ感染予防に限りませんが、病気を防ぐのに重要なのは「免疫力」です。免疫力を向上するには、運動、食事、睡眠がカギとなりますが、運動を十分にできなくなっている今、やはり重要なのは食事になります。また食事は体の健康だけではなく、メンタルの健康にも関係してきますので、十分に気をつけることが大事です。
免疫力アップに必要な栄養は たんぱく質、ビタミンD 。さらに腸内環境を整えることも免疫力アップにつながりますので、 食物繊維や発酵食品を意識 して取るといいでしょう。
たんぱく質
体を作る基本にもなります。肉、魚介類、卵、豆類や乳製品などですが、食べ過ぎればカロリーオーバーになりますので、質のいい低カロリーなものを選ぶ必要があるでしょう。肉類ですと鶏胸肉やささみ、豚ロース、魚介類は鮭、鯖、鯵などカルシウムの補給にもなり、なんでもおすすめです。植物性はなんといっても畑の肉とも呼ばれる大豆ですね、豆腐、納豆、豆乳など必ず何かしら毎日摂るようにするといいでしょう。
ビタミンD
鮭、イワシ、鰻などの油の多い魚に多いですが、同時に日光を浴びることでも生成できますよ。
食物繊維
単に便秘予防になるだけでなく、善玉菌を増やして腸内環境を整え、免疫力を上げる働きがあります。野菜、海藻、キノコ、豆や麦など、昔の伝統スタイルの日本食であれば自然に摂れていましたが、現代は不足しているといわれています。特に、お弁当などデリバリーばかりだと食物繊維はなかなか摂れませんので、意識してほしいところです。ついでにいうと、腸内環境を整えるには、ヨーグルトなど発酵食品がいいとも言われています。
お子さんも基本的な考え方は大人と一緒ですが、さらにカルシウムを意識して欲しいですね。カルシウムは、成長期のお子さんに最も必要な栄養素の1つです。魚、乳製品、大豆・大豆製品がカルシウムを多く含みます。ビタミンDとたんぱく質、クエン酸は、カルシウムの吸収を助けてくれますので、結局、バランスよく食べるという話になるんですが…。
「まごわやさしい」で栄養素のバランスを
ー 野菜ソムリエは、野菜・果物の知識を身につけ、そのおいしさや楽しさを理解し伝えるスペシャリスト。その青澤さんから、野菜の摂取に関するアドバイスは?
青澤 野菜不足と感じている人は多いようですね。 野菜と果物を合わせて1日500g とれるようにめざしましょう。バナナ1本100g、ミニトマト6~8個で100gと考えると500gもそう難しくはないのではないでしょうか。
それでもなかなか食事で野菜をとれない場合は、食前や食間に果物を食べるのがおすすめです。ただし、ジュースにすると糖分の吸収率があがってしまいますので、ジュースは午前中だけにした方がいいです。果物を食前にそのまま食べる場合は、糖尿病の人でも糖分を気にする必要はありません。
野菜のなかでも、オススメの1つがトマトです。ヨーロッパには、「トマトが赤くなると医者が青くなる」という言葉があります。赤い色素の「リコピン」には強力な抗酸化作用があり、他にビタミンAやビタミンC、食物繊維、カリウムなどを豊富に含んでいます。タイは、ミニトマトが主流です。 同じ100gであれば、大きなトマトよりミニトマトの方が栄養価は高い ので、果物と同じように口さみしくなったらミニトマトをつまむといいですね。
タイには、日本では手に入りにくい珍しい野菜がたくさんありますので、挑戦してみてはいかがでしょう。例えば、小松菜に似ている「広東菜」や日本では高級食材と言われる「カイラン」など、クセがなく煮ても茹でても炒めても、さらに漬物にしても美味しい野菜です。
ちなみに、「健康のために栄養バランスよく」といっても野菜だけ食べればいいというわけではありません。簡単なのは、ま=豆、ご=ゴマ、わ=わかめなど海藻、や=野菜、さ=魚、し=しいたけなどキノコ、い=芋という「 まごわやさしい 」食材をそろえることです。これらの食材を1日のうちに取るようにすると、自然と必要な栄養を摂取できます。
子供や男性も料理づくりを楽しんで
ー 先ほど、「食事を考える負担を減らした方がいい」とのアドバイスがありました。奥さんに変わって、例えば、在宅時間が増えたお子さんや男性でもできるオススメの簡単料理はありますか?
青澤 この機会なので時間がある方は、ぜひ料理にトライしてほしいですね。こだわりのカレーとか、生地から作るピザとか、徹底的に凝りだす人が結構いますが、 まずは簡単料理のレパートリーを増やして ほしいです。料理が苦手という方は、電子レンジを活用しましょう! 例えばキャベツ、モヤシ、キノコなどに、塩・コショウ、しょう油、麺つゆ、味噌、豆板醤、スープの素などなど好きな味を加えてチンしてかき混ぜればOKです。味を薄めにしておいて、他の料理のトッピングにも活用できます。インスタントラーメンやスープを食べる時に加えるとちょっとリッチ!? になりますよ。スープになんでもぶっこむっていうのもありですね(笑)。
缶詰や冷凍食品は、 栄養価の高い状態のうちに加工 されていますので、非常食として保存するだけでなく、日ごろからどんどん使いましょう。特に日本でブームになった鯖缶は、骨まで柔らかく食べられるのでお子さんにおすすめです。
タイではトマトで煮た鯖やサーディンが多く、そのままあたためても美味しいですし、そこにちょっと野菜を加えたり、味噌やカレー味に変化させたり、チーズをトッピングするなど楽しみ方はいろいろあります。
お子さんや男性は、まず、包丁を使うのがネックになるかも知れないですね。そんな場合は、ハサミを使うのもワザです。野菜も、わざわざ多くの種類を買わなくても、スーパーやコンビニで売っているサラダパックを買って、サラダチキンやツナ缶、ハムなど好きな動物質を加えてバリバリ食べると、脳も活性化して気分もすっきりです!
ー デリバリーの利用も1つの手ですよね。デリバリー利用時のアドバイスはありますか?
まず、同じ料理ではなく、肉メインと魚メインを交代で頼むといいと思います。また、揚げ物が毎日続かないようにも気をつけましょう。デリバリーではどうしても野菜が不足しがちということもあります。サラダを別オーダーするか、果物を意識して多くとるといいでしょう。先ほど言いましたように、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を別に食べるのもいいですね。
ちなみに手料理やデリバリーは、どうしても栄養バランスが偏ってしまいます。数日単位でいいので、違う食材を使うようにしましょう。料理のレパートリーが少ないと思う方は、ぜひネット情報を活用してください。
野菜ソムリエがオススメ! 簡単メニュー
青澤さんが代表を務める「野菜ソムリエコミュニティBangkok」では、非常事態宣言が発表された3月末から、ブログを通じて自宅で挑戦できる簡単メニューを紹介しています。そのなかから、今回は男性でも簡単に作れるオススメメニューを特別にダコのサイトでも公開します。
野菜ソムリエコミュニティBangkok
1. 色鮮やかで栄養たっぷりのミニトマトサラダ
日本種トマトをタイで販売されているびじんトマトさんのトマトを使用。そのままでもパクパク食べれる美味しさですが、グリルしたビーツとサラダにしました。約180℃のオーブンで50分ほどグリルしてホクホクになったビーツとプチトマトをカットしてルッコラの上に盛り付けただけのお手軽サラダです。
オリーブオイルと塩こしょうやマナオでシンプルに食べても良し、お好みのドレッシングをかけて食べても良し。お好みでナッツやチーズを添えると美味しいですよ。
※一緒にグリルしたさつまいもはそのままおやつに。
2. お手軽!タイの鯖トマト缶料理(カレー編)
タイの鯖缶は、トマト煮が多いんです。最初、タイだから辛いんじゃないかとか、何か独特な香りでもついているんじゃないかと敬遠していたのですが、使ってみたらシンプルなトマト煮で、使い勝手がとってもいいんです。
今回は、カレーを紹介。免疫力アップのためにスパイス・ハーブをたくさん入れます。ニンニク、生姜、ネギ、唐辛子をみじん切りして油で炒め、カレー粉も油によくなじむように炒めます。そこに缶の中身をドボンと投入!今回は、木綿豆腐もいれてみました。
炒めながら魚をほぐしていきます。柔らかいので簡単にほぐれます。骨まで食べられるのがいいですね。
味付けは、塩でもしょう油でも味噌でもお好みで。カレーは、カレールーでもレトルトでもいいと思います。とにかく手元にあるもので簡単に!基本のトマト味がしっかりしているので、どんな味付けをしても美味しくなります。
外出できなくて時間があるから何かしたいという方、食の大事さを実感している方、野菜ソムリエやアスリートフードマイスターの資格に挑戦しませんか?
●野菜ソムリエ
野菜・果物の魅力や感動を知り、自ら楽しむためのコースです。野菜・果物の楽しさを個人として実感し日々の生活に役立てることを目指します。
講習・試験とも10:00~12:15 受講料148,000円 |
69期 講習 7月11日(土) 試験 8月1日(土) |
70期 講習 9月12日(土) 試験 10月3日(土) |
●アスリートフードマイスター3級
アスリートご本人やサポートする家族向け。アスリートに必要な食事とは何かを学びます。
講習・試験とも10:00~11:45 受講料73,700円 ※7月11日(土)のみ14:00~15:45 |
28期 講習 7月11日(土) 試験 8月1日(土) |
29期 講習 9 月19日(土) 試験 10月3日(土) |
ともにお申込み・問い合わせは青澤さんまで。
E-mail saladee.aosawa@gmail.com