今までに訪問した食堂・屋台は1000軒以上! ローカル料理に特化した情報サイト「激旨!タイ食堂」の運営者である西尾さんに、タイの食堂・屋台の魅力と楽しみ方を尋ねました。
にしお・やすはる/タイ発の日本人向け月刊誌の編集者として勤務していた2015年に、“タイの旨い”が結集したグルメ情報サイト「激旨!タイ食堂」を開設。20年にはYouTubeチャンネルを開設し、動画でも情報発信を行う。旅行会社「TRIPULL(THAILAND)」代表。在タイ歴10年。
「激旨!タイ食堂」
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— タイ料理、特に食堂や屋台を取り上げたきっかけは?
私は約10年前にタイへ移住し、バンコクで編集者として働いていたのですが、その当時から家やオフィス近辺の食堂や屋台でタイ料理を日常的に食べていました。もともと胃腸が強く、食あたりになったのも10年の在タイ中に一度だけ。相性が良かったのでしょうね。
そして「タイでグルメ情報を発信するブログはいくつもあるけれど、ローカルなタイ料理に特化したものはない」と気づいた2015年に開設したのが「激旨!タイ食堂」でした。これまでに投稿した記事は約600件、訪れたお店の数は1000軒ほどになるでしょうか。 もうライフワークの一つです。
— 紹介するお店はどうやって探しているのでしょう?
「日本人は知らない、タイ人に人気のお店」がテーマの1つにあるので、基本はタイ人が発信する情報をチェックしています。近年はGoogle MAPで調べて、気になったお店にピンを立ててメモしています。今やマップ上はピンだらけ(笑)。お店選びの基準は「自分が食べてみたいかどうか」。未だに初めて出合う料理もありますし、本当にタイ料理は奥深いです。
— 今まで紹介したなかで一番美味しかった料理と言えば?
う~ん、1つに絞るのは難しいのですが、パッと思い浮かんだのはバンコクから車で1時間のナコンパトム県にあるエビの火山蒸し焼き「クンオップ・プーカオファイ」です。見た目のインパクトと美味しさに加えて、火山を模した陶器は特注で、そこでしか食べられない特別感もポイントですし、初めて食べた時はそのあまりの美味しさに「多くの人に食べてほしいと思い、「ナコンパトム訪問(世界一高い仏塔&火山エビ)ツアー」を立てたほど。そこから毎月のように個人イベントを立ち上げたことが、編集者を離れ、2017年に起業した旅行会社「TRIPPLE」に繋がっています。
〝よく分からん〟を楽しんで
— 情報発信を通じて、改めて感じる食堂・屋台の魅力とは?
一番は店主の顔が見える(店主に逢える)こと。複数の店舗を展開する人気レストランは食材や料理の質はいいですが、現場や料理にオーナーの顔が見えない。食堂や屋台は、美しさや華やかさを超えた〝店の味と温かみ〟がしみじみ感じられます。また親から子へ、そして孫へ…といった家族経営のお店も珍しくなく、料理だけじゃない一人ひとりの物語に出逢える。それがまた面白いんです。
また、タイ料理自体の魅力としてはカンボジアやラオス、ミャンマーなど周辺国と地続きだからこそ各国の食文化がところどころで顔をのぞかせる点。探究心がくすぐられますね。特に私がもっとも惹かれるのは「タイ中華」。そもそも中国料理は州によって食文化が独立するほど個性的ですが、そんな中国料理とタイ料理がタイの中で融合され、新たな食文化を生み出していることに興味は尽きません。
そのなかでもクイッティアオ(タイ風ラーメン)は中国から初めてタイに伝来した料理と言われていますが、その源流を知りたくて、2年前に中国(潮州)へ渡り、さまざまなお店で食べ比べました。タイで食べるクイッティアオとは異なり味付けなどはシンプルながらも、微かに同じにおいを感じる。「これが今のクイッティアオに繋がっているのか」と思うと感慨深かったですし、今日食べているものはタイ人に親しみやすいようにチリや砂糖、酢といった“調味料”を足すといった工夫されているのだと実感しました。
— タイ初心者が食堂を楽しむためのコツを教えてください
接客態度や店内環境など細かいことを気にするのではなく、「何が起こるか分からない状況を面白がる」ことではないでしょうか。これはタイ生活全般に通じることですが、当然タイでは日本の常識は一切通じない。言葉はもちろん、注文を間違えられたり店員が働かなかったりというのは日常茶飯事。一流ホテルで同じような扱いをされたら苛立つかもしれませんが、食堂でいちいち怒っていたらキリがありません。ぜひその場で起きる〝よく分からん〟をお楽しみください。