日タイ友好のシンボルを切り拓く思い
タイのチョンブリ県(シラチャ、パタヤ)、ラヨーン県の在住者へドライバー派遣事業を展開しているMASA JAPAN CO.,LTD.(以下マサジャパン)。本社をシラチャに構え、スタッフ400人強の大所帯を取り仕切る、代表取締役社長の阿部 真大さん。
過去にタイのトップリーグで活躍し今年からプロリーグを目指して再開したシラチャマサジャパンFC(旧名シラチャFC)のメインスポンサーをつとめるなど、シラチャ愛に溢れる気風の良さが信条。目抜き通りに昨年完成した、タイで2つ目となる由緒正しい日本の神社「真楽茶(シラチャ)神社」は、阿部社長が何もないところに一から建立した神社で、マサジャパン本社社屋の一階に位置します。本物の日本文化を継承し、日タイ友好のシンボルを切り拓く、シラチャ発ビジネスと文化を加速し続けるパイオニアにお話を伺いました。
ーーシラチャを知ったきっかけは?
以前バンコクに7年ほど住んでいて、その頃日本人が多く住むシラチャの街の存在を知りました。2011年にアユタヤ地区で洪水があった際に、アユタヤ、パトゥムタニ地区から日系企業がかなりシラチャに移ってきて、新たに工場を建設する動きが活発化しました。この盛り上がりを見て、シラチャにビジネスチャンスがあると確信し会社設立を決意。洪水があった直後に動いて3ヶ月というスピードで現在の会社を立ち上げました。
ーーなぜ、シラチャに住むことを決めましたか?
私がシラチャに住み出したのは、ビジネスの拠点がここにあるためですが、特に魅力を感じるのは、バンコクと比べて渋滞が少ないことです。何でも手に入りやすいコンパクトさが魅力で、特に買い物はロビンソンやイオンモールも近くにあり便利です。すぐ海に行けたり、自然が近くにあるのもいいですね。
当社は日系企業に運転手を派遣する事業を行っていますが、約400人のスタッフが常に稼働しています。不測の事態が発生した際にすぐ駆けつけることができるように、職場と住居はできるだけ近くに置きたかったので、現在は社屋の隣に住んでいます。
ーーなぜ、シラチャで事業を始められたのでしょうか?
シラチャは、バンコク時代から事業を展開していた運転手派遣のビジネスを加速できる最適なフィールドだと判断しました。当初は「これでうまくいかなければ、日本に帰ってハイヤーかトラック運転手で食い繋ごう」という、決死の判断でした。
会社を始めたばかりの頃は、まず従業員に支払う給料を最優先に考え、自分の生活は二の次。ベッドのない床にタオルを敷いて寝泊まりし、自転車で営業に出かけるなど清貧生活からスタートしたんです。
ーーシラチャの魅力
シラチャの街でタイ人と触れ合った際に、とても温かみを感じました。それまで住んでいたバンコクは都会なので、人と人との距離感があり、人間関係も希薄でした。周りの人に対して粗野な振る舞い、マナーの悪さ、乱暴な運転など気になることが多々ありましたが、シラチャはそんなことは皆無です。地元に長く住んでいる方が多く、助け合って生活していこうとする地域の絆が強く感じられます。在住日本人に対しても優しく接してくれ、包容力を感じます。
シラチャに根差して事業展開したいと考え、地元の文化も支えていきたいと思っています。現在当社は、トッププロリーグを目指して活動を開始したシラチャマサジャパンFCおよびタイのトップフットサルリーグに今年昇格したYFA Sriracha FCをサポートしています。YFA Sriracha FC は手に障がいを持つ日本人プロ選手がオーナー兼選手を務め、耳に障害を持つ選手達と共にタイで初めてトップリーグに昇格したチームで、耳に障害を持つ子供達の夢を叶える活動に共感をして、チーム設立時からサポートをしています。
ーー自分がシラチャ郡長だったら、シラチャの何を変えたいですか?
シラチャの特徴としては、この箱庭のようなコンパクトさと、世界的に見ても日本人比率最高峰というユニークな特色があるので、それを活かして何かできたら良いですよね。タイの行政に携わる各首長さんからも「日本と密接に関わりながら行政を進めたい」というお話はよく聞くので、もしシラチャの長になったらこれを推進し、日本の市区町村と姉妹都市を締結して友好を深めたいです。
道路、電線、信号システム、行政のシステムなどインフラに関わるフローは日本がかなり進んでいると思うので、友好都市になればこういった技術提供や観光資源の発掘という面で地域に貢献できると思っています。
実際、私はすでにシラチャ地域の文化交流に深く携わらせていただいています。毎年4月にチョンブリ県ソンクランパレードがチョンブリ県庁近くで開催され、チョンブリ県に属する11の郡(市)がそれぞれ300名参加して大きなパレードを行います。私はシラチャ郡長から真楽茶神社に毎年お声がけをいただき、日本人の有志の方々やシラチャ郡に属する地元の方々と一緒に御神輿を担いで参加しています。今年はパレードゴール地点に大きな鳥居を弊社で建立しました。この鳥居は日本とタイの国旗を掲げた日タイ友好のランドマークとして設置されました。
この鳥居のプロジェクトには、市役所からも協力金をいただき、県庁のすぐそばに設置されました。パレードが終わって一旦解体されましたが、今後は目抜き通りであるスクンビット通りにこの鳥居を再設置する予定です(✳︎取材時)。これによって対外的にも日タイの友好をアピールできることでしょう。
私はシラチャ日本祭りの実行委員長となり、今年で3年目を迎えます。チョンブリラヨーン日本人会主催で、在タイ日本国大使館とタイ政府観光庁が後援する12月のイベントで、延べ24000人の来場者が集まります。日本の屋台やアーティストを召喚し、大規模に開催されます。これからも地域に密着した活動を展開していきたいと考えています。
ーーシラチャ移住やシラチャでの起業を考えている方へのメッセージ
シラチャは小さな街ながら環境が整備され、住みやすい場所です。日本食やスーパー、デパートもあり、家賃も手頃で、しっかりとした施設の病院もあるので安心です。将来的には電車が開通すれば、バンコクから1時間以内でアクセスでき、都市ネットワークの拡大が期待されます。
シラチャは製造業の企業が多く、チームワークを重視するフィールドです。起業を考えている方は、一度この街に訪れて現地の雰囲気を感じ、自分の目標を明確にすることが重要です。
真楽茶神社の建立はコロナ禍の売り上げが非常に厳しい時期、何も知らないところから設立という事もあり、会社設立以上に大変な労力を要しましたが、その経験から私には大きな自信が与えられました。神社は地域にとって重要な存在であり、日々多くの人々が訪れています。これからもシラチャの憩いの場として愛され、地域の活性化に貢献していきたいと思います。
真楽茶神社神職・戸澤菜摘さんのコメント
真楽茶神社の神職になったきっかけ
私は、日本の神社に奉職する傍ら、以前からバックパックひとつで海外に行くほど旅好きで、タイも訪れたことがあります。知人から「タイといえば、カンチャナブリに桑井川神社があるよ」と聞き、その時初めてタイに日本の神社があることを知りました。
現在私が運営しているYouTubeの撮影で、桑井川神社に行ってみようと思い、旅の計画を立て、タイを再訪しました。しかし、せっかくカンチャナブリを目指したのに、雨季の荒天で辿り着けませんでした。
旅程も撮影先も決まらず途方に暮れていたところ、Webサイトで真楽茶神社のことを知り、アポイント無しで訪れたところ幸運にもマサジャパンの阿部社長とお会いすることができたのです。
当時はシラチャ日本祭り目前で、阿部さんは実行委員長として忙しくされていましたが、「11月のお祭りに神職としてご奉仕していただきたい」とお申し出を受け、私はそれを謹んで承りました。それがここで神職として奉職するきっかけとなりました。
その時以来、大きな行事の際は、諏訪大地主神社および桑井川神社の蟹江宮司様と共に、真楽茶神社にご奉仕をさせていただいています。
タイでの神社参拝の意味
日本人に広く信仰されている神道とは、広く深い意味で「日本人の姿」「もののあらわれ」を指し、日本人らしさの本流に流れているものです。
日本にいれば、どこに行っても神社があり、馴染み深いと思いますが、タイではそうはなかなか行きません。ここ真楽茶神社はバンコクから最もアクセスの良いところとして貴重な存在になっていると思います。ここを見つけてわざわざ来ていただいている方々は、日本にあまり帰れなかったり、出産や七五三などの節目の行事を大切にしたかったり、そういった日本人らしさを大切にできる拠り所を求めていらっしゃっていますね。
シラチャは日本人の絆が結ぶ、世界一温かい街
設立から2年経ち、みなさんが心のオアシスとして大切にされているのが、実際の参拝者の方々やSNSの暖かいコメントなどから伝わってきます。
「神社に行けて本当に良かった」というお声をたくさん聞くことができて、神職の立場としても大変嬉しく思います。私もこの神社があるご縁で、シラチャの街をタイのホームタウンのように感じることができています。
海外に住んでいる日本人が一丸となって、街を盛り上げる姿勢を見たときに、シラチャの街は愛がぎゅっと詰まっていると感じました。人と人との繋がりの深さがあり、大人の方が行事ごとに積極的に参加する姿も美しいです。
一度住んだ方が、シラチャから帰りたくないと名残惜しむ気持ちもわかります。私は海外にこんな素敵な街があることに本当に驚きますし、シラチャは日本人の絆が結ぶ、世界一温かい街だと思います。
取材協力・平澤晴花
真楽茶神社
住所:Sriracha Shinto Shrine Association (Head Office)
No.106/10 Surasak Sa-nguan Road,T.Sriracha, A.Sriracha, Chonburi 20110
Tax ID: 0993000474724
Tel. 038-321007 Fax. 038-321011
時間:8:30-17:30
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