不在の存在を感じる海

フアヒンほど、海を恋しい人になぞらえるのにぴったりの場所を私はほかに知らない。
バンコクから車で3時間、タイ湾を南北に小さく切り取る海岸線。砂浜は清らかに白く、ところどころ岩が突き出た海は、こちらに媚びることをしない。
メインビーチ沿いの一等地、ホテル創業は1923年。当初レイルウェイ・ホテルの名前で呼ばれたここは、鉄道でラマ6世の宮殿を訪れるセレブリティの宿泊所であったという。当時のロビーは現在ティールーム兼ミュージアムとなって、時代を偲ばせる写真や調度品が展示されている。
長く伸びた廊下でつながった客室棟は3階建てと低い構え。それはテラスから、完璧なフレームで見渡した庭。視界を余すところなく滴る緑に、地に近いという要素がこれ以上なく生かされていることを知る。枝を動物のかたちに刈り込まれた木々が遊ぶ広大な庭と青く光るプール。 こちらも決して海に媚びることはせず、真摯に緑を育んだ庭である。象の形に刈り込んだひときわ大きな木は、創業からずっとここにいる。
磨き込まれたチーク材の飴色と外壁の白。由緒正しき地としての誇り。見遣ればそこに海。伝統の重厚さを重ねるほどに、風通しの良さと軽やかさが引き立つ。フアヒンは、貪欲に海を遊ぶ場所ではない。
海は確かにそこにある。とても静かに。たとえ実際に波に体を打たせることはせずとも、心は常にその存在を感じている。あるいは実際に触れるよりもはっきりと。
水平線は真っ直ぐではないから、いつかどこかで出会うことになっている。目には見えない「いつか」に思いを馳せる余裕がここにはある。この海の良さは自分だけが知っている、と思う。
だからフアヒンの海辺ほど正しい気持ちであの人を思い出す場所を私はほかに知らない。
Sofitel Centara Grand Resort & Villas,Hua Hin
住所 1 Damnernkasem Rd., Hua Hin,Prachuab-khirikhan
電話 0-3251-2021~38
HP www.sofitel.com www.centarahotelsresorts.com
上記HPから各種プロモーションのインターネット料金設定あり。
※例:スーペリア6700B(朝食付税サ別)など








