バンコクの日常からほんのひとときエスケープできる近郊のローカルスポットへ。見どころ1つ、昼食1カ所が基本コースです。次はあなたが行けるように。この1日レジャーを楽しむコツも合わせて紹介します。
おすすめ係 元史跡発掘調査員のテンモー
旅して書く係 休日はそぞろ歩き専門編集部KN
ずっと気になりながらも4年間、立ち寄ることなく通過していた。
バンコクから30分ほど走ったハイウェイ上から見える巨大な3頭の象。多くの人がパタヤ方面へ行くたびに車窓から見ていたと思うんだ。いよいよ車を降り、真下で仰ぐことにした。その名は「エラワン象博物館」。
バス停はパンティッププラザの向かいで、ペップリー通りソイ15の辺り。先を急いで、来たバスに飛び乗る。番号23。目的地は博物館だけど、23番は「サムローン市場」で乗り換えだ。高速道路を行き、バイテックを通過。乗車から20分で市場へ。次は536番のバスに。乗り換えた車内で車掌さんに「エラワン・ミュージアム」と伝え11Bを払う。ここからは早い。ハイウェイの下のバス停に8分で着く。いつもはもっとかかっていたと思ったけど?
荘厳の建造物にため息和みの庭にひと息
正門の両脇に広がる庭園に、ほんの一瞬、香川県の栗林公園を思い出した。がしかし。あっという間に空で鼻を上げている象に心は奪われてしまうのだった。「でか……」それしか言えない。象の高さは29m、博物館の部分を含めると約43m、象の総重量250t。見上げて30秒。真下から見ると視界の70%は象。空はそれらのわずかな背景色。だんだん神々しく見えてきた。何か宿っているのか。
創始者はレック・ウィリヤパン氏。
メルセデスベンツをタイで初めてディーラーとして取り扱った事業家の彼が、蒐集した古美術品をタイの財産として保管したいと、この博物館の建設は始まったらしい。1階は撮影禁止の「地下世界」。貴重なアンティーク家具と食器、彫刻物などが並ぶ。数世紀の時を重ねたベンジャロン焼の前で、その渋さにクラクラした。暗い展示室も門外不出感があってゾクゾクする。ドーム型の2階3階部分は、「人間界」を古美術品とステンドグラス、無数のベンジャロン焼きで表現。
うわぁ~。第一印象、美しくもチャーミング。ベンジャロンのレンゲが象の耳にあしらわれていたり、象の鼻が手すり止めを支えていたり。各地からアーティストが参加して創り上げているゾーンで開館から6年が過ぎた今も未完。空間創作は続いている。
さらに階段を上り「天上界」へ。
宇宙を描いた藍の世界には仏舎利や彼の仏像コレクションが鎮座。12世紀ロップリー時代の貴重な木彫り立像は必見だ。今までこれを通り過ぎていたのか。外にはカフェ、タイ料理の青空レストランもある。庭で昼寝だってできる。1日ここにいられるじゃない。ほら、もう2時。ごはん食べよう。麺をすすって、ぼんやり運河の上
昼ごはんは、ここからバンナー方面に走ったところにあるバーンプリー水上市場で取ることにしていた。エラワンで空腹絶頂だったが、
テンモーに「タクシーで20分ぐらいだから」となだめられ、車内で目を閉じた。
我慢してよかった。着いたところは運河沿いの素朴な水上商店街。橋は舟、道は木板、店はそのまま彼らの住居。渡り場のすぐ横の店で味濃く肉汁たっぷりのクイティアオ・ヌアをすする。あとはたらりたらりとちっちゃな店内をのぞけば、風情はバック・トゥー・ザ・昭和初期!? ワンデー・タイムトリップの出来上がりだ。