バンコクの日常からほんのひとときエスケープできるスポットへ。基本は見どころ1カ所、ごはん処1カ所ですが、今回は魚介類の名所だったのでごはん処をもういっちょ! 次はあなたがおいしいシーフードにありつけますように。
旅して書く係:ニコ。軽度のmsgアレルギー。今回は症状が出なかった。産地万歳!
案内係:タイ人リサーチャー、ペー
戦勝記念塔からホイロートの干潟へ
実家近くのひなびた海浜公園が商業地区に姿を変えて以来、インドア派の私にとって、自然の海は縁遠い存在となりました。そんな私に潮干狩りのお誘いが。なかなかお目にかかれない高級食材「ホイロート(マテ貝の仲間)」が捕獲できるとのこと。それは貴重な体験になりそう。それでは編集部のぺーさんと友人Kちゃんと一緒に出発!
戦勝記念塔からメークローン行きのロットゥーで約1時間半(70B)、塩田風景を楽しんでいるうちに、お隣サムットサコン県を越えてサムットソンクラーム県メークローンに到着。すぐ横の市場に抜けている通りを過ぎ、病院前からソンテオに乗り換えて「ドーン・ホイロート」へ向かいます。そこはメークローン河口にある干潟で、ホイロートが群棲するためこの名がついたそうです。
プラー・トゥーで腹ごしらえ。足鍛われる泥地帯へ!
まずは着いてすぐ、名物料理を堪能するため、ソンテウの降車場でもあるレストラン「ルンカン」へ。ここの特産品はホイロートだけではありません。タイで一番おいしいといわれる当地のプラー・トゥー(グルクマ)は、先の市場でもふっくらツヤツヤと主張していました。
注文したのは「チューチー・プラー・トゥー(レッドカレー炒め煮)」「ホイロート・パッチャー(辛味炒め)」など4品。期待以上の絶品でした。活きのよさって最高の調味料ですね。食事を終えていざ干潟へ。今日は風が強いので、厳しい日差しなのに汗ひとつかきません。干潟の手前まではボート(1人10B)。そこからしばらく、膝まで沈む泥地帯を歩きます。これが予想以上に難しい。大空と大海原を眼前にしながら、倒れないように全神経を足裏に集中させなければいけません。
同じボートに乗ってきた同行のペーさんは遥か先へ。気付いたら、Kちゃんと私だけが取り残されていました。恐るべし、タイ人の運動能力。「この泥、死海の泥に似てない?」Kちゃんの一言で、サバイバル気分に取って代わられたホリデー気分が一気に復活しました。幻の美肌効果で気を紛らせながら慎重にを進めます。切り替えは大事。
ハマグリ狩りで大収獲!
膝下泥パック状態でなんとか干潟に到着し、ぺーさんと小さなヤドカリの先導で貝のいそうな場所を探します。すでに袋いっぱいにホイタラップ(ハマグリ)を捕獲した人も。ところが、だれも本命のホイロートを捕獲していません。「これは!?」Kちゃんが奇怪な生物の死骸を発見。半透明の甲冑にミミズのような胴が伸びています。しばらくして、再び同じ生物の生体を発見。Kちゃん、妖怪アンテナついてますね。
さて、適当な場所でハンティング開始。細い棒の先端に石灰をつけて穴に差し込むと、ホイロートが釣れるんですって! でも釣れない……。そこで潔くホイタラップ捕りに作戦変更。すると出てくる、出てくる。素手で浅く泥をかいただけで、大物小物がゴロゴロ出てきます。小さなバケツの底が埋まる程の大収獲(翌日、捕獲したホイタラップはおいしいお味噌汁になりました)に、慎み深い私たちは満足し、そろそろ退却。
潮見表によると、もう潮が満ちる時間です。みるみる干潟を覆う潮に自然の神秘と脅威を感じながら、ボートで岸へ。桟橋では生きたホイロートの袋詰め(50B)が売られていました。次回は、業者さんより朝早く来れば見つかるかしら。
風の中のプラー・トゥー・バーガー
泥パックを洗い流した後は、みやげ物屋通りを散策。焼きカブトガニやホイロート、ホイタラップの佃煮などに目移りしつつ、ここにしかないというプラー・トゥー・バーガーを食べてみました。鮮度抜群の甘く柔らかいプラー・トゥーのメンチが挟んであります。
このバーガー店が併設されている水上レストラン「クンパオ」で休憩。満ち潮で刻々とせり上がる海面のすぐ上にある座敷席で寛ぎ、
注文したのは超がつくほど贅沢な、子持蟹入りゲーンソム(とても辛い料理なので「辛くしないで」と注文しよう)と焼きプラー・トゥーです。どこまでつついても出てくる蟹の卵とふっくらした魚の身に染みた幸福を噛みしめました。おたまで掬ったスープや分厚いメニューまで吹き飛ばす強風も、慣れればそよ風。ああ、よい一日だった。こんな開放感を味わったのは久しぶりでした。自然の力は偉大です。母なる海よ、ありがとう。