旅行作家・下川裕治が見るタイの「今」

旅行作家・下川裕治が見るタイの「今」 持続化給付金と沖縄の空気感【バンコク急行】第17回

新型コロナウイルスの感染を防ぐためにロックダウン政策をとる国は少なくない。しかしそれに対する補償の話になると、国の違いが鮮明になってくる。バングラデシュは3月からロックダウンを続けているが、補償はほとんどない。僕はバングラデシュの小学校の運営にかかわっている。学校は休校が続き、先生たちの給料も止まってしまった。急遽、日本でクラウドファンディングをたちあげたのは、なんとか先生の給料を……という思いからだった。

日本はほかの国に比べると、営業時間の短縮要請に留まったが、持続化給付金などが支給された。会社組織の飲食店などは200万円が支給されたところが多い。しかしこの金額も地方によって温度差がある。
沖縄の離島の路線バスを乗りつぶすという酔狂な旅を続けている。この旅もコロナ禍に振りまわされているが、7月、渡航自粛が解かれた八重山諸島にでかけた。石垣島の繁華街の店はほとんどが店を開けていた。

おでん屋に入った。主人はこんな話をしてくれた。

「感染は怖いよ。本土からのお客さんからのね。でも、この辺は家賃が高い。従業員の給料もある。店を開けざるをえないんですよ」

持続化給付金はありがたかったが、トータルで考えれば赤字だという。

石垣島から飛行機で与那国島に渡った。日本最西端の小さな島である。ここにも路線バスが走っていたからだ。

泊まった民宿の1階が居酒屋になっていた。宿代を居酒屋で払ったが、テーブルの上に椅子があげてある。店は休んでいるようだった。宿のおばさんはおしゃべり好きだった。

「居酒屋は弟がやってるさー。休業要請で休んで、持続化給付金、200万円もらいました。うちにとっては大きいよー。店を休んで、半年分以上の利益をもらっちゃったようなもんだからね。今年は休みにしました。居酒屋の仕事は大変だからね」

訊くと家賃はなかった。実家を改装したのだという。おばさんと弟で切り盛る店で、従業員はいない。

昔、カンボジアで聞いた話を思い出した。海外青年協力隊がカンボジアの村で二期作を教えた。翌年、その村に行くと、水田は荒れていた。水も入っていない。海外青年協力隊のメンバーが首を傾げると、村人はこう答えたという。

「去年、2回分の米をつくったから、今年は休むことにした」

二期作と持続化給付金は次元が違う話だが、欲のなさは共通している。本土の日本人が沖縄に憧れるのは、この空気のせいだろうか。


しもかわ・ゆうじ
アジアや沖縄を中心に著書多数。新刊は『12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編』(朝日文庫)、『「生きづらい日本人」を捨てる』(光文社知恵の森文庫)。

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