アレンジが陽気で踊り出したくなるあの音楽。やや演歌を彷ふつとさせるしんみりとしたバラード。タイで過ごしていると、突然、そんな音楽が耳に飛び込んでくることがあるだろう。
これらは、タイ東北部のイサーン地方に土着する音楽「モーラム」であることが多い。
タイに関心を持つあなたに、ぜひモーラムを聞いてほしい! ということで、その入り口として、近年進むポップスとのコラボレーションを紹介する。
BNK48もモーラム?その訳は?
2020年1月、タイのアイドルグループ・BNK48が新曲『ドート・ディ・ドン』を発表した。『恋するフォーチュンクッキー』を筆頭にAKB48のカバーをしてきた彼女たちだが、本曲は久々のオリジナルソングにして、ほぼ全編をイサーン語で歌うモーラムを強く意識した曲で、アイドルポップスからの路線変更に驚きの声も上がった。
タイの音楽市場では、モーラムの要素を取り入れたポップスが定期的にヒットしている。ポップス系歌手のモーラム進出は、ファン層の拡大が狙いだ。タイの1/3はイサーン出身者。モーラムの要素を取り入れることで、彼らにアピールできるのだ。先のBNK48はYouTubeの再生回数が公開6日間で約780万回を突破する大ヒット。なんと『恋するフォーチュンクッキー』を上回る速さだった。
ポップスやロックとの相性も抜群。まずは聞いてほしい楽曲5選
AKB48が演歌をやったらこんな感じ?
BNK48
ドート・ディ・ドン โดดดิด่ง(2020年)
ついに出た! タイ発であるからにはいつか出すべきだった、アイドル・モーラム・ソング。イサーンを舞台にした映画『タイバーンシリーズ』の4作目のタイアップソングとして発表された。BNK48には、この調子でタイらしい楽曲を制作していってほしい。いっそのこと、モーラムの中心地ウボンラーチャターニーでUBN48を発足し、ガチガチのモーラムを聴かせるアイドル集団を生み出せば、イサーン人からの全面的な支持が得られるはず。
日本でいえばキムタクと八代亜紀の共演!
Bodyslam × シリポン・アムパイポン
キット・ホート คิดฮอด(2010年)
セブンイレブンのキャラクターも務める、ひげを生やして髪を縛った男・トゥーン氏。彼が率いるタイの国民的ロックバンドBodyslamが、モーラム歌手のシリポンと手を組んだ。哀愁あるロックサウンドのなかで何度も繰り返されるリフは、イサーン人なら誰もが踊りだすシリポンの大ヒット曲『ボーラックシーダム』から。
モーラムはヒップホップとの相性も抜群
Daboyway × アンカナーン・クンチャイ
カオ・マー เข้ามา(2017年)
モーラムの大御所の1人であるアンカナーンが、まさかのヒップホップとコラボ。タイのヒップホップ界を牽引するDaboywayとのトップアーティスト同士のタッグによって、2つのジャンルが見事に融合。ヒップホップ側からのモーラムへのリスペクトを感じる一曲になった。最高。
ロックサウンドが一瞬でモーラムに……
FLAME × ヌット・ウィラーワン
オーケーパ? โอเคป่ะ?(Yes or No)(2015年)
人気バンドFLAMEと女性モーラム歌手ヌットがコラボレーション。ロックソングの真ん中で、いきなりヌットがモーラムをぶちかます。こういう突然な繋ぎ合わせがタイ音楽の面白さ。YouTube再生回数は1.5億回を超えた。クラブなどで多くのバンドにカバーされる定番の曲。
モーラム界の若手歌姫がポップスに挑戦
Boom Boom Cash × ラムヤイ・ハイトンカム
サートゥ สาธุ(2018年)
EDM/タイポップスのグループのBoom Boom Cashが、現在21歳にして超売れっ子モーラム歌姫ラムヤイをフィーチャリング。ミディアムテンポのポップスで、ラムヤイはイサーン語を交えて歌う。彼女のおかげで、Boom Boom Cashのなかでも再生回数が桁一つ飛び抜けた曲となった。
ともに大人気の20代2人がコラボレーション
OG-ANIC × ラムプルーン・ウォンサコン
アーイ・パー・マー・カオ・パー・パイ อ้ายพามา เขาพาไป(2019年)
どちらもYouTube再生1億回超えを何度もたたき出す、ラッパー・OG-ANICと、GMM GRAMMY所属のモーラム歌手ラムプルーン・ウォンサコンがコラボ。普段はチャラい印象のラッパーOG-ANICだが、人気プロデューサーNINOの力も借りて、イサーン人に刺さるほのぼのとした曲調で仕上げてきた。
おしゃれになったイサーン楽器はお好きですか
Asia7
クワンジャオウーイ ขวัญเจ้าเอย(2017年)
イサーンの伝統楽器であるピンやケーンを取り入れるユニット、Asia7。タイ・コンテンポラリー、フュージョン、ジャズ、ポップス…自ら表明するように、どういう音楽かジャンル分けが難しいが、初めてイサーン楽器の音に触れるという人にも聴きやすい楽曲だろう。
DACO514号では「今こそ聴きたい! タイ音楽の世界へ いきなりモーラム 」特集を掲載。
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