タイでは今週も様々なニュースが駆け巡りました。そのなかでも注目のニュースを、ダコの姉妹紙である「newsclip」編集部が解説します。
今回のテーマは、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和についてです。
非常事態宣言への慣れ? 早期の規制緩和を促すタイ国民の自粛姿勢
タイ政府は昨日15日、新型コロナウイルス感染症対策に関する会議で、タイ国内のショッピングセンターの営業再開と夜間外出禁止の時間短縮を承認しました。
いずれも明日17日からの処置で、デパートやショッピングセンターは午前10時~午後8時の営業が認められ、夜間外出禁止はこれまでの午後10時から翌朝午前4時までの計6時間が1時間短縮され、午後11時から翌朝午前4時までの計5時間となります。
タイではバンコク都が3月17日、不特定多数が集中する施設に対する閉鎖指示や、都民に対する外出自粛要請を告示し、各県が追随して同様の処置を発表。後の同月26日、中央政府が各方面への指示にあたって自らに権限を集中させるため、非常事態宣言を発令しました。
5月15日時点の累計で感染者3025人、死亡者56人に達しましたが、2854人がすでに治癒(ゆ)。先週は新規感染者および死者が0人という日もあり、早期収束への期待感が広がっています。普通の生活が戻りつつあります。
評価されるのはやはり、タイ政府による非常事態宣言の迅速な発令とタイ国民の自粛姿勢でしょう。日本の緊急事態宣言との比較は適当ではありませんが、タイはやはり政府も国民も非常事態宣言への「慣れ」があり、手際の良さが目立ちました。
バンコクでは10年前の2010年に起きた、反政府暴動の際にも非常事態宣言と夜間外出禁止が発令されています。10年前も今年も非常事態宣言を経験した、という在留邦人も少なくありません。分離独立を大義名目としてのテロが未だ絶えないタイ深南部でも何年もの間、戒厳令と非常事態宣言が続きました。
タイ国民による自粛は率先的です。国民全員が規制を遵守しきれるものではなく、違反者が逮捕されたというニュースは流れましたが、日本のように自宅勤務の在り方で議論を交わしたり、県をまたぐ移動で騒ぎを起こしたりすることはまれであり、「自粛警察」などといった極端な言動も見受けられません。そのような自粛姿勢が急激な感染拡大を妨げ、今回の規制緩和につながったものと評価できます。
むしろ本格的な問題は今後起こりうるのではないでしょうか。家計崩壊に苦しむ国民や経営難に頭を抱える企業をタイ政府がどれだけ救済できるのか。もともと経済低迷が続いていたタイです。「心許ない」というのが本音でしょう。
もちろんタイ政府による対策も、新型コロナウイルスの撲滅ではなく、感染ピークをつぶして医療崩壊を回避することが大きな目的です。「ピークを潰せば裾が伸びる」のはタイも日本も同様です。
タイきってのビーチリゾートであるプーケット島のプーケット空港に関しては、14日に運航禁止措置の解除が発表されましたが、翌15日の昨日に解除が撤回されています。早期収束が期待されつつ、不安を払拭しきれないのも事実です。国としての収束宣言がいつになるかは、もう少し様子見が必要とのことです。
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