新型コロナウィルスの影響による外出自粛生活で、子供と一緒に過ごす時間が増えたという家庭も多いはず。子供を成長を改めて感じた、という方もいるのではないでしょうか。
今回は、日々成長していく子供の将来のために、ぜひ気にしてほしい「O脚・X脚」のチェックについて紹介します。大人になってからO脚やX脚を直すには手術が必要ですが、実は手術のいらない新しい治療法もあるそうです。脊柱と関節形成術が専門の整形外科医であり、スポーツ医療も行う「バンコク・アドバンス・クリニック」のソムサック医師が解説します。

「バンコク・アドバンス・クリニック」のソムサック医師
2歳を超えてからのO脚・X脚は注意が必要?
まず、O脚・X脚について改めてご説明しましょう。O脚とは、直立した状態でアルファベットの”O”のように膝の角度が足首よりも湾曲した状態。一方の X脚は、まっすぐ立っているときに膝から下に広がる状態。 脚が”X”のような見た目になります。
大人になってミニスカートや半ズボンなどを履いた際に、見た目が気になるということもありますが、怖いのは、膝の筋肉が弱い・太りすぎといった他の負の要因がある場合に、膝に痛みを感じることです。変形がひどい場合には膝の変性症状を発症し、激しい痛みだけでなく、日常の動作にも影響を与えます。

右足の手術を行った大人の患者。右写真は1年後の様子
成人になってからの治療は、残念ながら手術が唯一の選択肢。しかし子供のうちであれば 、足と膝の成長に合わせて、状態をケアしながらの治療が可能です。
お子さんの状態を確認して、「うちの子供、膝が曲がっているかも?」と思った方。すぐに不安にならないでください。幼児の間は軽度のO 脚、X脚に見えるのは非常に一般的です。 多くの子供は歩き始めるとO脚,X脚はまっすぐになり始め、成長と共に正常な足の形へと変化していくと考えられます。

0歳から8歳までにおける、状態の変化のイメージ
実は出生時の子供の足や膝の形は関節がまだ柔らかく、不安定です。 研究では、赤ちゃんの足と膝はまっすぐではないことが示されています。 特に新生児の 赤ちゃんの脚は「脛骨大腿骨の角度」(外側に曲がる角度)が最大15度に曲がるといわれています。 この曲がる角度は年齢とともに徐々に減少。 2歳くらいで脚・膝は通常まっすぐになります。
その後 2歳前後からは足・膝が内側に曲がり始めます。 この湾曲は、3歳頃に徐々にひどくなることがあり、 場合によっては湾曲の角度は出生時の湾曲と同じくらい大きくなることも(約12〜13度)。 こちらも成長していくなかで、この湾曲の角度は緩やかになっていきます。 6〜7歳になると湾曲の角度が小さくなり(わずか数度)、再びまっすぐに。 湾曲の小さな角度は、基本的に子供が大人になるまで安定します。
では、何歳くらいに気にするべきでしょうか。私の経験則からお伝えすると、まず生後20カ月前後までのO脚・X脚はそこまでの大きな心配しないでください。 ただし、子供が2歳以上でまだ明らかなO脚・X脚である場合は、医師の診察を受ける必要もあります。その際も過度な心配は必要ありません。先ほどご説明したように、1〜2年で湾曲が少なくなり、脚がまっすぐになるのが一般的ですから。

2歳を超えた男の子のレントゲン写真。
それでも、親御さんが不安と感じるのは当然ですよね。心配な方は不安を解消するために、整形外科医に見てもらうことをお勧めします。 医師は膝の角度の測定、患者の歩行スタイルの観察、その他の調査など必要な検査、場合によっては、骨の長さの構築部位が正常な形状であるかどうか、または異常があるかどうかを確認するためにレントゲン撮影も行います。
靴のインソールを変えるだけでO脚・X脚が治る?
もし手当が必要な場合、子供なら手術を伴わない治療方法が大きく2つがあります。1つは、膝装具の使用です。 優れた素材の登場と3Dプリントテクノロジーの進化により、近年、個々の膝の構造に適応する装具のカスタマイズが可能になっています。

変形性膝関節を持つ高齢の患者は、膝装具の使用で痛みを緩和できる。
ただし子供の場合は、やや使い勝手で何があるかもしれません。というのも、しっかりと装着するため、どうしても排尿・排便時に装具を汚すことがあるんです。また、成長に合わせて定期的に器具を交換する必要もありますが、外国製の器具の場合はややコストがかかる点を挙げなければいけません。
もう1つの治療法は「カスタムメイドインソーシューズ」の使用です。これは、水平面の構造、脚の角度、長さを考慮して、患者ごとに制作するオリジナルの「靴」もしくは「インソール」です。脚の筋肉がより適切に機能するように刺激されるので、身体のバランスが整う効果が期待されるんです。

「カスタムメイドインソーシューズ」の原理は、体重の圧力と歩行張力を膝関節の曲げる力として使用するというもの。
カスタムメイドインソールシューズのメリットは、まず膝装具と比べて見た目の違和感がない点。特にインソールは、普通の靴の中に入れて使用できるので、日常生活の妨げになりません。また膝装具と同様に、成長に合わせて靴やインソールを必要に応じて変える必要がありますが、インソールは膝装具よりコストを抑えられます。
カスタムメイドインソールシューズ制作の5ステップ
カスタムメイドインソールシューズは、専門知識を持つ整形外科医の厳密な監督下で使用します。ですが、以下のようにとても簡単に作れるんです。
1. 身体構造の検査
2. 背骨、股関節、および足全体の構造をレントゲン撮影。さまざまな角度から足の長さの詳細な測定を行います。 身体状況を正確に把握するために3D CTまたはMRIスキャンが必要になることも
3. 専門の整形外科医が診断
4. 直立および歩行の型を取る
5. 患者それぞれの仕様に従って、整形外科のシューズデザイナーとの打ち合わせ
この5ステップをへて、靴またはインソールの製造へ。完成品が届いたら、靴もしくはインソールが患者の足にあっていることを確認します。ここまでの期間は、通常約2〜4週間です。
その後、定期的に状態と治療の有効性を確認しますが、 子供の場合は通常6か月ごとの診察で問題ありません。なお、カスタムメイドインソールシューズを使用しても状態が改善しない場合は、やむおえ手術を受ける必要があります。 幼児やティーンエイジャーに適した多くの手術方法があります。
ちなみに、このカスタムメイドインソールシューズは子供だけでなく、大人、そして高齢者のすべての年齢の人に合うように作ることができるんです。例えば、高齢者は膝関節の変性からO脚になる可能性があります。靴を早く装着するほど効果的で、より満足のいく結果が得られるでしょう。
また、私は、膝に心配のない人にも使用をお勧めしています。なぜかというと、カスタムメイドインソールシューズは体の他の部分の構造を調整にも効果が期待できるからです。例えば、腰の骨の歪みや猫背、身体の左右のバランスが崩れているといった方にも役立ちますよ。
Bangkok Advanced Clinics
住所 1/18 Soi 24 Sukhumvit Rd.
電話 0-2000-3535、08-1632-6138(英語)
時間 8時〜17時 日休
Web http://www.bangkokadvancedclinics.com/jp
料金 X線撮影1200B、ドクター診断500B、雑費80B、インソール6200B
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